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ローマンという名の男 信念の行方のmaverickのレビュー・感想・評価

4.3
デンゼル・ワシントン主演と聞いたら観ずにはいられない。彼が出演する映画はどれも素晴らしいから。本作は日本で劇場スルーで、Filmarksでもずっと日本版パッケージが表示されておらず原題のままだった。デンゼル・ワシントンの演技は今回も見事で、扱いの低さは残念だが、アメリカでも彼の演技のみ評価が高く、作品自体はさほど評判が良くないようだ。でも自分は本作を凄く気に入った。監督は『ナイトクローラー』のダン・ギルロイ。人間が誰しも抱える心の闇を描くのが上手い人だなと思う。本作の主人公は潔癖と言っていいような人間で、不誠実なことを毛嫌いしている。彼は弁護士だが、誠実な弁護士は貧乏。不誠実な弁護士は金持ちというイメージ通り、彼も貧乏暮らし。それでも正義のため、弱い人のために信念を持って戦っている。理想に燃えており、映画の主人公にぴったりなキャラクターだが、現実は残酷である。善人として生きていて、自身は身を削るような日々なのに、生活は改善しない。生活は困窮し、追い詰められる。周りから認められず、どうしてこんなに苦しまなければならないんだと苦悩する。この気持ちすごく分かるなぁ。頑張ってるのに報われないと感じると凄く辛い。誰しも感じる気持ちだと思う。そして主人公はそんな生き方に嫌気が差すのである。本作の主人公は清廉潔白な人物ではない。正義感に燃え、信念を持つ男だが、欠点もたくさんある。実に人間らしいリアルなキャラクターだ。デンゼル・ワシントンはこの役を実にリアルに演じている。実在の人物ではないが、そうとしか見えないくらいにリアル。彼がこれまでに演じた役の多くは威圧感のある強気なキャラだが、今回はがらりと役柄が違う。話し方や表情に癖があり、いつものデンゼル・ワシントンとはまた違った魅力に溢れている。この作品は彼に演じてもらうように当て書きしたそうだが、確かに彼なしでは本作の魅力は出せなかっただろう。悪いことを何もしないで生きている人間などいない。大なり小なり生きていれば何かしらあるもの。本作を見て、主人公を卑下することが出来るだろうか?正しい生き方とはどういうことなのか?考えさせられる作品だ。デンゼル・ワシントン好きには間違いない1本。見応えある作品で素晴らしかった!
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