マクガフィン

オンリー・ザ・ブレイブのマクガフィンのレビュー・感想・評価

3.4
山火事の知識が殆どなく、気候が関連しているとはいえ頻繁に火事が起こることは想像できないが、江戸時代の大火事の防ぎ方と違う、気候によって変わる火の進行方法を予測しながら火をもって火災を制する方法に興味津々。

山火事が起きた理由を聞かないことや説明しないことが日常と地続きのようで、誰かがやらなきゃいけない過酷な任務なことが伝わる。また、戦争映画のような訓練シーンは、森林消防隊チームが命懸けの任務で、人や家だけでなく美しい自然や動物の命を守る過酷な職業の説得力に。リーダーのPTSDのような心情も戦争のような過酷さを表すようにも。馬や自動車事故のメタ的な心情構築はラストに向けた積み重ねにも。

仕事と家庭のパートを絡ませるのが巧みで、リーダーの家庭問題や落ちこぼれなチャラ男の成長とチームとしての絆や友情が芽生えて、実績を積みエリート精鋭部隊のホットショットに昇進する。組織と個・家族などの様々な成長譚は、ベタな設定と演出だがアツい。
仕事柄、長期間仕事に束縛されて家庭との両立が難しいことを、浮気されて彼女に逃げられることや赤ちゃんが顔を覚えてくれないことで描写することも巧みで、家庭で待つ女たちの苦悩と命が関わる仕事に対する葛藤も味をもたらす。

リーダーとチャラ男の2人を主軸とし、死が関連する所以で、リーダーは子供を作らないこととチャラ男の無計画出産する「生」の対比や、家庭を顧みた時の仕事に対する真逆な考えが巧みに。

何度か山火事を消火するシーンを挟むことで、山火事に対する免疫力がついた経緯で訪れる、伏線の特訓を回収するスペクタクルな終盤は壮絶で、色の対比は惨憺たるものに。焼け野原な戦場のようにも。

リアルな火にこだわったせいか、火力が弱いように感じたのでCGも必要だったのでは。火力が強ければ強いほど効果的なので残念だが、既視感なフォーマットに納めない作品は単純な英雄賛歌にならず、「生」以外にも様々な問題を考えさせられる。