カワウソのアイサツ

オンリー・ザ・ブレイブのカワウソのアイサツのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

映画を観るにあたって、前情報を一切入れずに観る主義だ。
アリゾナの美しい景色の中で、森林火災を防ぐべく誠実に職務に勤しむ隊員達を映し出すカメラは、どの場面を切り取っても壁に飾りたいくらいに美しい。
どれくらい美しいかと言うと、自然と涙が頬を伝う程だ。

信頼する隊長の元、想像を絶する厳しい訓練と消化活動に明け暮れる隊員達を見ていると、誰ひとり死んで欲しくないと願ってしまっていた。
よくある、消防士を描いた映画のように、苦難を乗り越え生還する感動の物語だと思って観ていた。
実話だという事のみ念頭に置いて、死と隣り合わせの任務に笑顔で励む彼らを、まるで家族のように見守っていた。
そういう描き方をしているのだ。
実在し、かつて生きた人々を監督自身が敬意を持っているのが本当によく分かる丁寧さに感動した。

まるで想像もしていなかった。
何も頭の中で繋がってなかった。
これが9.11以降、最悪の、多くの消防士の生命を奪った山林火災の惨劇を描いた映画だという事に。

自然と生命を護る為に生命をかける息子や夫を誇りに思いながらも、任務に向かう彼らの無事を祈りながら送り出す人々が今日もいる。

残酷な程美しい光景……映画館のスクリーンで観て良かった。
一生忘れられないだろう傑作だと思う。
だけど、こんなほど悲しい映画もない。

その多くが20代だった19名の魂の安らかならんことを……RIP