ま2だ

オンリー・ザ・ブレイブのま2だのレビュー・感想・評価

4.1
オンリーザブレイブ、すべりこみ観賞。

山火事に立ち向かう、市はじめてのホットショット(エリート森林消防士)たちの物語。実話ベースの感動もの、であることは確かだが、対象に向けるまなざしの距離感・温度感をキープすることで、このようなオリジナルな手触りを獲得できるのかと驚かされる。洋邦既存の感動災害ものとは一線を画した仕上がりだ。

夫婦と家族の抱える問題、負け犬からヒーローへの成長、リーダーシップの伝承など、山火事と森林消防士の闘いに重ねて描かれる人間ドラマは、題材こそ目新しいものではないが、細かいディテールを用いつつも過剰に個人に踏み込まず、それらを森林消防士全体に敷衍してみせるような語り口が特徴的だ。これによって安めの感傷への寄り道を回避している。

また山火事というファクターの擬人化というか、頻発する山火事に登場人物と同等にカメラや時間が割かれていることも本作の特徴だろう。ジョシュ・ブローリン演じる指揮官が劇中何度も炎に向かって語りかけるように、本作での山火事はライバル的に描かれている。その意味で本先の手触りは結末はどうであれ、災害ものというよりはスポ根ものに近いと言えるかもしれない。

山火事のシーズン到来、という台詞があるが、アメリカにおいてこの規模の山火事が日常的に発生していること、森林消防士たちは水ではなく、伐採や掘削や炎で先回りして山火事をコントロールすることなど、不勉強な自分には新鮮な知識もたくさん得られた。

安定のジョシュ・ブローリンもいいが、キャスティングに関しては彼の妻を演じたジェニファー・コネリーと、新参の若者を演じたマイルズ・テラーが素晴らしい。変わらぬ凛々しい眉毛そのもののような頑迷さを持つコネリーは、夫婦のエピソードに生々しさを付与しつつも過度な深掘りはしない。その意味で本作のトーンを体現しているような演技だった。ゆとり&クズ感たっぷりのなんともとらえどころのないテラーを、ストーリーのもうひとつの軸の顔に据えることで、映画にいい意味での不安定さがもたらされていると感じた。少々安直な感想だが、彼は次世代のショーン・ペンかもしれない。

白人だらけ、ハードロックまみれなベタな素材を用いつつ、抑制の効いた筆致でハードボイルドな手触りに仕上げたオリジナリティを買う。
ま2だ

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