うめ

坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK : asyncのうめのレビュー・感想・評価

3.9
ライブ内容は僕なんかの理解は
到底及ばないレベルのため論評は避けるとして、
2017年は中咽頭がんが見つかって3年経った頃。
そして直腸がんと診断される3年前にあたる。
忌まわしい検査でのがんの見落としは
ここニューヨークで起きた。
3年後にまさかそんな事態が待っているとは。
あまりにも残酷である。

ライブ映像には最前列でメモをとりながら見つめる生物学者・福岡伸一が映っている。
2人は20年来の知り合いとされ、
EテレのSWITCHで対談を行っている。
それがのちに一冊の本にまとめられ、
坂本がこの世を去る4日前に出版されている。
タイトルは「音楽と生命」。
その中で坂本は、
つねに間違いを繰り返しつつ進んでいるのが
生命であり、
AIには音楽やアート、生命や宇宙を
理解できないと思うと述べている。
かつてのテクノの巨人が、
AIによって作られるものに、
まったく興味を示していないのが面白い。

芸術は自然の模倣でしかない、
と言った人間がいたが、
晩年の坂本龍一はより自然の音を
求めていたように思う。
このライブでもそれは垣間見ることができる。
あくなき表現力と探究心。
進化の過程としての坂本龍一の姿が
ここにある。

「僕を踏み台にして世界に出て行かないか」
と細野晴臣に説得され、
YMOのメンバーになった坂本龍一。
惜しい人を亡くしたとつくづく思う。
うめ

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