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クソ野郎と美しき世界のogawanderlandのレビュー・感想・評価

クソ野郎と美しき世界(2018年製作の映画)
3.5
オムニバス映画はあまり観たことがないので評価が難しいところもあったけれど、結論としては全体的に面白かった。
一番好きなのはep1で、吾郎さんにハマっていることを差し引いても(笑)、映画として最も個人的に好き。こういう世界観を邦画で実現したってことにまずトキめくし、園子温すごいな!と。吾郎さんの天然貴公子キャラクターが軸になっているからこそ、脇役も派手に暴れることができているのだと思う。内容なんて無い、軽薄でナンセンスな虚構性が全て吹っ飛ばしてくれるようで楽しい。好き嫌いが分かれそうな世界観ではあるけれど、映画好きなら楽しめるのではないだろうか。
ep2は発想が面白いファンタジーで、かつ一番SMAPの現実に近い内容になっている。特にファンの方に響くのではないだろうか。
ep3は最も感動的だが、個人的には評価を難しくさせられたエピソードで、太田節が効いていてユーモアもあるんだけど、思想的に気持ち悪い部分があるし、ツッコミどころが多い。しかし、草彅剛と尾野真千子の演技が素晴らしいのでそれだけでも観る価値はある。
ep4はミュージカル。これも面白い世界観で好き。各エピソードの伏線を回収する機能もあり、そのためにもミュージカルだけどモンタージュになってる。個人的にはサ上が出てきて一番驚いたw。ep2の回収がちょっとふざけ過ぎかとも思うけどw全体的によくまとまっている。





以下細かい考察。ネタバレ気味なのでここからは観てない人は注意。

この映画は新しい地図のコンセプトムービーと捉えるとより理解できた気がする。
特にep2と3→4の流れは、失ったものを取り戻そうとする物語で、警察=秩序・法=禁止に囲まれた世界、すなわち不自由な世界でそれでも取り戻したい歌がある、取り戻したい存在がある、というメッセージが伝わってきた。
逆にep1は新しく大切なものを見出す物語。新しい地図の未来への期待ととれる。軽薄でナンセンスな虚構性はアイドルの虚構性とも結びつけられるか?
全体を通してよく手や指が出てくる気がしたけど、指は5本→5人だから?
それからエンディングはミュージカルが夢の世界とも解釈できるような、一気に現実へ突き放すような感じだったのが引っかかる。新しい地図の、華やかな夢に囚われずに現実に向き合っていこうとする意志ということ?余談だがラストの地球最後の日って曲をep3を踏まえると、移植つながりで映画『あさがくるまえに』のEDで流れたデヴィッド・ボウイの『Five Years』を思い起こした。
最後に、なぜ「クソ野郎」を乱発するのか?って考えてみた。クソ野郎ってつまりは価値のないやつってことだけど、人でもモノでも価値の有無って他人の眼差しで決まることでーーしかもそれは大きく変化しやすいーーそういう意味ではクズと宝(美しき世界)は表裏一体であると。芸能界の華やかさと残酷さの両方を知るであろう3人の作品だからこそ、そういう打ち捨てられたところからまた素敵な世界へ変えていこうとする意味に読み込めた。
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