聖

娼年の聖のレビュー・感想・評価

娼年(2018年製作の映画)
5.0
なにもかも「つまらない」と諦観し、死んだような日々を送っていた青年・リョウは、幼き日に別れた母の面影を抱いた女性との出会いをきっかけに娼夫となる。

そして女性の深淵に惹きこまれた彼は、生まれ変わる。スポンジのように、出会った人々の思い・経験を吸収して、大きくなっていく。様々な境遇・性癖の人々との邂逅。その全てに真摯に向き合うリョウであったが、やがて思いは溢れ…


性という題材を扱っているし、セックス描写が直接的であることから、その文脈で語られることが多いが、自分には、仕事をしていて感じることに近いと感じた。

自分を導いてくれる仕事や上司、同僚との出会い。自分の狭量な価値観を広げ、人間として成長していくことができるのは、出会いによってこそ、だと思う。

なので、リョウの姿には素直に好感を持ったし、彼の前で全てを曝け出していく人々も、愛おしい存在に感じた。特に桜井ユキ。彼女のシーンでは興奮と切なさを同時に抱き、画面上の2人とシンクロした気分となり、涙を流していた。

冗長なセリフはない。二つの体の折り重なる姿が、自然と感動を呼ぶ。言葉よりも五感に訴えかける、肉体の説得力。文字通り、体当たりの演技だ。

松坂桃李は語るまでもない。
それこそリョウのように、全てを吸収して、現在進行形で大きくなり続けている俳優だ。いったいどこまでいくのか。ゾクゾクする。

桜井ユキは、芝居で心情をキチンと表現していた。語られないストーリーを表現していた。

荻野友里は、非常に少ない登場シーンだったけれども、役所と相まって印象に残った。

猪塚健太のシーンには怖気も感じたが、美しくも見えた。軽やかに演じてみせる様に感心した。

真飛聖、冨手麻妙、小柳友、馬渕英里何、、佐々木心音、西岡徳馬、大谷麻衣、階戸瑠李、江波杏子

全員素晴らしかった。
よくぞ演じたと心の中で拍手喝采。

それにしても、あれだけ直接的に描写しているのに、即物的なエロさは感じなかった。方々で言われている手での愛撫については、わざと誇張した描写にすることで「ただ興奮させるために撮ってるのではない」と示したのかもしれない。

凄まじい作品だと思った。
一点、気になるところはある(それについては完全にネタバレに触れるのでコメントに書く)。

だが、そんなことは瑣末なことと思えるほどの愛に溢れた映画であり、大好きな作品だ。