ちろる

ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男のちろるのレビュー・感想・評価

4.0
ボタニカルでエスニカル、それでいてエッジィで微かな毒のエッセンスもある。
ドリス・ヴァン・ノッテンの作り出す世界にはいつも圧倒される。

私はファッション業界に長くいたのでらデザイナーのドキュメンタリーを観るのは好きなのだけど、ファッションドキュメンタリーを見たことによって初めてデザイナー自身をこんなに好きになったのはこれが初めて。

大体のデザイナーのキャラクターは多かれ少なかれ、最初に「個性的」という言葉が思い浮かぶけれど、なんというか・・・彼は想像以上にとてもノーマルでソフトな人柄なのだ。
でも作品を作り出すその工程はとてもアーチスティックで彼の作り出す作品に一貫したストーリー性を感じるのはこういう考え方のおかげだったのかと納得させられた。

作り手の生活まで考える。
彼はどこまでも繊細で真面目でなによりも品がある。
苦労してきた人だから作り出すデザインもこの世にはたくさんあるが、服に囲まれた家で生まれて、着実に、学び、成長しながら世に出た彼の作品だからこそ作り出す世界に私は虜になった。

ライフスタイルまでとにかく好き、事務所も去ることながら、おうちがカッコ良すぎるではないか!
ターシャ・デューダのような野性的で美しいガーデンと、お城のようなお屋敷。

クラシカルな世界で穏やかさ満ちたエレガントな私生活と、モダンで緊張感に満ちた刺激的な仕事時間。
この緩締の繰り返しが彼の素晴らしい作品の源になっているのかなと感じる。

最高齢のファッショニスタ アイリス・アプフェルは言った。
「彼のようなデザイナーは他にはいない。」

私はすべてのデザイナーについてよく分からないのに、ふと、そうなのかもしれないとその言葉を信じられた。

ファッションドキュメンタリーというと、その人物を追い続けて、キャッチーに作ってる作品が多いけれど、こちらはドリス自身が多くを語り、彼のフィロソフィーが存分に堪能できて感無量。
例え彼の作品に興味がなかったとしても、なんらかのインスピレーションは言えられるはず。
だからファッションを学ぶ人やデザイン関係のお仕事の人たちにはぜひぜひ観てほしい作品でした。
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