JIZE

Merry Christmas!~ロンドンに奇跡を起こした男~のJIZEのレビュー・感想・評価

3.4
世界中で愛され続ける珠玉の名作"クリスマスキャロル"の誕生秘話と作者"チャールズ・ディケンズ"の激動な創世記を描いた文学ものクリスマス映画‼やむを得ず吹替で鑑賞。︎主人公が幼少期に抱えた闇を墓石の前で自問自答してジブンの分身とも思えるスクルージに翻弄されながらも正気と狂気の間で悩み苦しみ解答を導き出す過程が綿密に描き込まれている。まず1日前に観た実写ディズニー新作の『くるみ割り人形と秘密の王国(2018年)』より造りは純正で四季に則した真っ当なホリデーシーズン映画として骨格が貫かれていたように感じた。また主演ダン・スティーヴンス演じる著者ディケンズの神経質そうな表情がコロコロ移ろっていく内側の多面性に魅力がある。いわゆる本作は純文学的な本好き活字好きにお勤めしたい作品でデフォルメされたファンタジー世界がそれに被さって体現されていた。気が狂いそうなほど正気を失いジブンを追い詰めていくディケンズに対して周囲との微妙な雰囲気が漂う対比も天才とはいえ紙一重であり生々しいなあと感じました。あくまで地形や物語が飛翔する構成は取られずほぼ家内のワンシチュエーションだったのもジワジワ煮詰めて作家の苦悩を追体験できる構造だったのではないか。そんな天才の新作を生み出すまでがスランプが沸騰しそうな空気感に乗せて紡ぎ出される。亡霊スクルージが魂の闇の体現で表裏一体してる描写の連ねかたは見応えありました。というよう不朽の壮絶な誕生譚が描かれた偉大な小説家ディケンズ好きには一見の価値アリかと思われます。
JIZE

JIZE