半月板損傷

サイドマン:スターを輝かせた男たちの半月板損傷のレビュー・感想・評価

3.0
よくぞこの人達をテーマに映画化してくれたなと思う。
それを日本で上映してくれたK’sシネマにも感謝。

泥をすすり、幾多の苦境を乗り越え修羅場をくぐり生き抜いてきた爺さんたちの飾らない自然体の佇まい。
一転ステージでの年齢を感じさせない凛々しさ。
そしてもう、そこにいるだけで毛穴から滲み出てるようなブルースフィーリング。
デカいスクリーンで、大音量で、マディやウルフと共にステージで躍動する彼らや、貴重なインタビュー風景を観られただけでもうブルースファンとしては感激です。

一方でドキュメンタリー映画としては微妙。というか不満。
ムダが多い。
テーマが絞り切れてない。
何かペラい。
3人を追ううちに、だんだん「ブルースとは?」という包括論もやりたくなってしまい、話がとっ散らかって薄まっちゃった感。
こんな超ウルトラニッチな3人がテーマなのに、そこから?そこからやるんですか??みたいな。

基本的には後輩アーティスト達や当時の関係者らが「いかにこのサイドマン達が偉大か」を代わる代わる語る感じの、海外のドキュメンタリーによくあるスタイルなんだけども、これがまぁどれもこれも大したこと言わない上に結構な時間を占めていて。後輩アーティスト達の「彼らこそがヒーローさ、イエー」「あのアルバムは衝撃だったね、ワーオ」みたいな薄いコメントはアクセント程度ならいいけど終始そればっかで少々辟易。当時の貴重な映像や本人達の映像にちょいちょい水を差される感じがもどかしい。
ボビーラッシュとか当時を知るリビングレジェンドの話ならいくらでも聞きたいけど、そういう人の出番は少なくて...。

あと「ブルースは次世代に受け継がれていく」的な表現を狙ったのか、よくわからないアマチュアの白人のティーン達がアツく語ったりブルース演奏を披露したりするんだけど、すごいどうでも良かったです。気持ちがグングン離れていきました。
そういうのはまた別の機会にやって頂きたい!

ジミヘンもそりゃ素晴らしいけど、ここでそんなにフューチャーしなくてよくない???

といった具合にとにかくムダが多くて散漫で、そう言うの削ったら30分~40分は短くなると思う。
そのぶん、貴重な貴重な「本人達の」映像・演奏・インタビューをもっとノーカットで観たかった。だってさー、彼らの映像、こんな機会に一挙蔵出し公開しないで、今後一体いつするの?
彼らを映画化するなんて機会、もう二度とないのに!

彼らはなぜサイドマンなのか?とか、
それについてどう思っているのか?とか、
どんな想いでどんなこだわりをもって長年サイドマンを勤めたのか?とか、とかとかとか。
故人だから新たに訊くことはできないにせよ、テーマとしてもっと3人の内面、人間像を掘り下げて欲しかったです。ジミヘンはジミヘンのドキュメンタリーで観るからいいんです。

でもそういう脱線話の中にも興味深いくだりがあって、ブルースブラザーズのジョン・ランディス監督の「マックスウェルストリートのシーンは本来マディ・ウォーターズがキャスティングされていたが風邪を引いてしまい急遽代役にジョン・リー・フッカーが起用された」って話は初耳だった。
確かに言われてみればマディのサイドマン達をバックにジョン・リーが「Boon Boon」を歌うという不思議な構図だった。
もしマディだったら何を演る予定だったんだろう?
「Hoochie Coochie Man」?
「Manish Boy」??
「Got My Mojo workin」???

それから、一部で再現VTRならぬ再現アニメという手法をとっていて、この画風がなんとも今風でポップな感じですごく浮いてました。

エンドロールもブルースともつかない謎の知らない曲で「えっなんでこの曲???」みたいな余韻で幕。
そこは素直に、彼らの往年の名演奏でよくない???

とまぁ色々思う所はありますが、とにもかくにも彼らを取り上げてくれただけでもGJ!ということにしていきたいと思う。
当時の貴重な映像や至高の演奏を、シアターで観られただけでも幸せです。

幸せです。

ちなみに唯一の物販のB5ポスターは迷わず購入。
だってこの3人がメインのポスターなんてコレ以外、後にも先にもないだろうから!
半月板損傷

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