MasaichiYaguchi

あいあい傘のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

あいあい傘(2018年製作の映画)
3.7
2012年に解散した劇団「東京セレソンデラックス」が2007年に上演した舞台を、主催者で脚本家の宅間孝行さんが自ら監督して映画化した本作は、訳あって生き別れた父と娘の25年振りの再会を通して家族の絆と愛を浮き彫りにしていく。
映画の主な舞台となっているのが小さな田舎町にある風情溢れる恋園神社。
神社は神様とご縁を結ぶところで、参拝して幸せになる為には「感謝」の気持ちを抱くことが大事だとされている。
つまり神社は「ご利益を願う」より先に「感謝をする」場所だということ。
本作では一年に一度の祭りが近いこともあり、テキ屋をはじめとした賑やかな面々が登場するが、下品で多少おバカなところはあっても気の良い善男善女ばかり。
そういった彼らが、25年の隔たりによって出来た親子の〝溝〟や〝距離〟を縮めようと陰ながら応援する。
ストーリーの進展と共に、愛情に溢れていた一家が何故生き別れなければならなかったのか、そして何故父親は以前の家族を捨てて、この小さな田舎町で新たな家族と共に暮らしているのかが紐解かれていく。
主演で父親を探しにきた娘・高島さつきを倉科カナさんが、その手伝いをするテキ屋の兄ちゃん・雨宮清太郎を市原隼人さん、ある事情で家族と生き別れせざるを得なかった父・東雲六郎を立川談春さん、その現在の連れ合い・松岡玉枝を原田知世さんという主要キャストで心の琴線に触れる家族の物語が展開し、それをやべきょうすけさん、高橋メアリージュンさん、トミーズ雅さんが盛り立てていく。
この手の作品だと、お涙頂戴的な展開が続いたりするものだが、本作の場合、笑いの要素が多く、そして終盤に向かうにつれて熱いものが胸に込み上げてくる。
縁を結んで運命を引き寄せたり、感謝を捧げるパワースポットでもある神社を主舞台にした本作は、人々の優しさや愛に溢れていて心癒します。