これは貴重な映像。ドキュメンタリー作品のパイオニアとして知られるロバート・フラハティが、いまから90年以上前の1926年に製作した「モアナ」に、新たな音楽や言葉を加え、デジタルリマスターした復刻版。南太平洋サモアの人々の生活を、カメラにきっちりと収めている。しかも、若干のドラマ仕立ても考えられており、結婚を控えた男女の、式までの日々を追っている。もちろん、クライマックスは結婚の大祝典。歓喜に沸く、島の人々の祝祭が、ライブ感すら感じさせるくらい見事に描かれている。
惜しむらくは、モノクロフィルムのため、タヒチの美しい自然を原色で見ることはできないのだが、それでも海は青々と見えるくらい、カメラは素晴らしい風景もとらえている。ロバート・フラハティが発表した当初は、もちろん無声映画だったが、1980年に娘のモニカ・フラハティが、現地の人の会話や音楽を採取、これらが付け加えられ、2014年にデジタルリマスター版がリリースされたという。モノクロなのに、カラーの作品を観たような錯覚陥る作品。
