辛ラ主義者

カメラを止めるな!の辛ラ主義者のネタバレレビュー・内容・結末

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 序盤の30分近いワンシーン・ワンカット(『ONE CUT OF THE DEAD』)が、ロケーションを活かしきった、アイデアに満ちた映像で面白い。舞台となる貯水場から屋外へ、そして屋上へと縦横無尽に移動するカメラワーク。途中で通るよくわからないトンネル(?)もすごく良い! ところどころにある違和感が、後に解消される知的な快感、それがこの映画のキモであるのは間違いないと思うのだが、このパート単体でも大変見応えのあるゾンビ映画でしょう。そして『トゥモロー・ワールド』よろしくレンズに付着した血のりを、指で拭うという描写にたいへんドキッとさせられた。このあたりの、観客を宙づりにするやり口もまた面白い。

 この序盤部でおおっと驚かされたのが、最後の最後、カメラがヒロインの足下まで下降してから上昇しはじめ、元凶であるらしき五芒星の真ん中に彼女が佇むさまを捉えるところで、それまで手持ちだったのに、どうやってこれを撮ったのかなあと。
 そんな風に気になっていたせいで、そのネタが明かされる件には笑ったし、大変胸打たれた。あのラストが、「ゾンビ映画のカッコいいラスト」であると同時に、それを思わず笑ってしまうほど無様で必死なアクションが支えていること、その必死さが「映画をみんなで頑張って完成させる」というプロの矜持を滲ませることを内包したものなのだと。そして父から娘へのひたむきな想いがここに重なるのだからもう堪りません。