アンタレス

カメラを止めるな!のアンタレスのレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.2
山奥の廃墟。この"いかにも"なロケーションでゾンビ映画を撮影していた一行。撮影中、スタッフの一人が本物のゾンビとなりパニックに陥るメンバーだが、監督はリアリティの追究のため、カメラを回し続ける。そして完成したのは37分の短編映画だった。


とてつもなく話題になっていた作品。そしてゾンビと聞かされては黙っているわけにもいかず観賞したが、これは確かに面白い。
前半、チープな劇中劇を30分に渡り観せられるのだが、映画やドラマというより舞台に近い雰囲気で、かつての演劇部時代を思い出しながら観ていた。その内容は、この作品の構成的にもありきたりであればあるほど活きてくるので、かなり良い導入となったのではないだろうか。
後半が一番の見所であり、劇中劇の『鬼監督』を始めその他スタッフ達が右往左往する様がよく練り込まれている。
そうなると、一番難しいのは前半の『劇中劇』と後半の『舞台裏』を繋ぐ中盤部分である。ここはどうしても盛り上がりに欠ける部分なので仕方ないとはいえ、若干のテンポの悪さがあったように思う。だが、作品全体の質を下げるほど致命的なものでもないので、気にしなければ何も問題はないだろう。
似たような作風の『探検隊の栄光』に比べても粗が少ないという印象。
やはり、演者達が生き生きとしている作品はそれだけでも引き込まれるが、そこに優れた脚本、構成が加われば自ずと傑作が産まれるのだ。名前だけは売れている三谷幸喜作品なんかより、今作の方が余程優れているコメディなのでは。
低予算だろうが、有名俳優が居なかろうが、いくらでもハイクオリティな作品は撮れるのであり、ごみ溜めと化した現在の邦画界に一石を投じる革命的作品ではないだろうか。
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