Iri17

カメラを止めるな!のIri17のネタバレレビュー・内容・結末

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

異例の大ヒットだそうなので、めちゃくちゃハードルを上げて観たのだが、悠然と跳び越えて行きました。

前半は完全に伏線で、出来の悪いホラーを見せられるのだが、どこか間の抜けた間(ダジャレでない)やタランティーノみたいな無駄な会話が面白く、飽きることはなかった。そして後半の怒涛の展開は終始爆笑しっぱなし。こんな脚本よく書けたな。

ただそれだけでなく、モノづくりの素晴らしさが溢れ出ているから素晴らしい。
監督は分からず屋のプロデューサーややる気のない役者に振り回されっぱなし。クリエイター魂の抜けた存在だった。だが娘の助けで、再びクリエイターとしての気合いを取り戻すことになる。まさに家族の力だ。
そして困難に立ち向かい、仲間と協力して撮影は成功する。その時の皆の笑顔がこの作品の肝だと思う。モノづくりに関わらず夢や大きな仕事には困難や分からず屋やトラブルが付き物だ。だが仲間と一緒にそれを乗り越えて、大好きな事をやり終えた時、それは本当にかけがえのないものだと思う。

よく作品や仕事のために人を犠牲にする人がいる。だがこれは間違いだ。人を楽しませる、喜ばせるために作品を作ったり、仕事をしているのに、スタッフや従業員を犠牲にしていいわけがない。
例えば高畑勲は素晴らしい作品をいくつも作っているが、そのために多くの優秀なアニメーターを酷使して、潰してしまったと鈴木敏夫さんが言っていた。そうだとしたら高畑さんは間違っていたと思う。作品の価値は変わらないが、人を死なせたり、情熱を奪ってまで作品を作るべきではなかった。人を犠牲にして作った作品が幾ら素晴らしくても、それは作られるべきものでなくなってしまうのだ。作品が人より大切なものになってはいけない。

この作品のキャストやスタッフの集合写真を見ると、皆楽しそうで家族のようだ。作ることを心の底から楽しんでいる。観る人、スタッフ、キャスト、全てが幸せな気持ちになってこその映画だ。
何週間も家に帰さず、下っ端には暴力を振るうような日本のTV局は間違っている。
モノづくりの大変さと楽しさを再確認させてもらった素晴らしい映画だった。
Iri17

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