10円様

カメラを止めるな!の10円様のレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.2
皆さんこの作品を三谷幸喜監督の作品。「ラヂオの時間」と対比されている方も多いと思われます。役者とスタッフの軋轢、現場と製作の温度差などなど…舞台裏をユーモアの緩急を淀みなく上手い具合に付けた三谷監督の最高傑作(と思ってます)37分ワンカットのゾンビ映画の裏側では何があったのか…
全編ワンカット映画と言えば「バードマン」が思い浮かびますが、こちらは撮影と編集が天才的なのと機材力のチカラでワンカット風になっているものです。シーンの区切り目が全く分からない!
しかし本作は全くのアナログです。ハリウッド級の人材もいません。もはやこれは製作陣の映画への愛が成せたものでしょう。こういう映画、2年に一本は出てくるんですよね。それが陽の目を見るか否かは運命としか言えませんが…

ネタバレあり


しかしこのゾンビ映画、粗がありすぎるんですね。唐突なセリフや変なアングルのカメラ。おまけにレンズの血糊を拭いているシーンまで。(結果これは奇跡的なグッドミステイクでしたが)
もしかしたら、ワンカットの映画を作ったんだけどやっぱり全然上手く行かなくて、じゃあ何故上手くいかなかったのかを映画にすれば面白くない?どうせならゾンビで。なんて発想からこの映画は誕生したのかもしれません。技量の無さを逆手にとるのも技量。一発技だけど最高に面白い映画を作れる人がいるんですね。
ただ何故これがラヂオの時間の二番煎じで終わらなかったかと言うと、役者の熱演にあると思います。特に監督役の濱津隆之。「最高かよー!」
終始不安げな表情を崩さず、かと思えばマッド野郎にもなる。普通の表情が無いんですね。この不安定さが映画自体の不安定さとシンクロして、次!次どうなる!?ってなります。後半に行くにつれて解決策がどんどんテキトーになるあたりもこの手の映画の笑いどころを分かっていますね。この映画は彼の映画だと思います。これは唐沢寿明には無かったなあ。

どうやらキャスト、スタッフの方々は十分なギャラは無かったという話です。それでも一本の映画を作るという使命に真摯に対峙した野心的インディーズ作品。ラスト、撮影が完成しみんなが笑い転げるシーンがとても印象的でした。
この映画の成功で事務所契約になった役者さんもいますが、気になるのは上田慎一郎監督です。こんな映画を撮ってしまい次はもっと資金が積まれると思います。予算も上がったがハードルも上がった。しかし、カメ止めのファンは上田慎一郎監督の映画をずっと観に行くのでしょう。それほど上田ブランドを確立させる程のインパクトはありました。私ももちろんファンです!

ちなみに2009年に「不灯港」というめちゃくちゃシュールな恋愛映画があったのを知っていますか?日本映画史の中に埋まりに埋まり、今や地底で眠っているインディーズです。レンタル等で見かけたら是非!
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