純

カメラを止めるな!の純のレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.8
心から映画が好きで、家族が大好きなひとが作った映画なんだなあと思えるエンドロールだった。スカッと突き抜けるような爽快感は、愛おしい登場人物たちのおかげなんだと思う。気難しかったり生意気だったりぐうたらだったり気弱だったり破天荒だったりなのに、全然不快感がなくて。なんかもう可笑しいのと眩しいのとで涙が出てしまった。一所懸命っていいな。全力っていいな。一緒に頑張れる大切な誰かがいるって、本当にすごく素敵なことだ。

カメラを止めない。頑張ることをやめない。諦めないことをやめない。妥協なんてしたいときにいつでもできて、あんまり普通みたいに扱われるものだから、油断したら癖になってしまうよね。生活をしていて、仕事をしていて、きっとどこかで「したくないこと」を受け入れなくちゃいけないときがある。悔しくて、不甲斐なくて、でも結局少しずつ諦めて。凍えてしまった心をたったひとりで温めながら、譲れないものをひとつしっかり抱きしめていた。きっと、監督がそういうひとだったんじゃないかなあって勝手ながらに思って観てました。

幸福度がすごいんだよねえ、この映画。小規模だし、決して派手なエンタメ作品ではないけど、どの映画よりも幸せが詰まっていた。それぞれの立場で言いたいことはいっぱいあるけど、しのごの言わずにやるっきゃない!っていう振り切ったあの全力感がたまらなく本物の青春で、もう本当に眩しいの一言だった。ネタバレは一切見ずに鑑賞したんだけど、ただひとつFacebookで監督のお父さんの投稿だけ事前に読んでいて。それを読んでこの映画観に行こうって思ったんだけど、観終わった後も「ああこれは家族の映画なんだ」って迷わなかった。照れ臭い愛と感謝がやさしく広がって、強く強く抱きしめたくなった。

2度楽しめるっていう構成の工夫も楽しめるし、それ以上に映画や家族への愛がたっぷりの、優しくてあたたかい作品だった。好きなことを好きなようにすることって素敵なんだって嬉しくなったもんね。わたしたちは頼りない生き物だけど、楽しかったことや嬉しかったことや素敵だったことを、ちゃんと覚えているから。だから皆、この映画が好きなんだと思う。カメラは止めない。
純