ニューランド

カメラを止めるな!のニューランドのレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
3.0
本作の事を初めて聞いて一年近く経つのだろうか。職場のやや年下の監督たけし世代の人が、満員で入れず、拡大ムーブオーバーの流れで大ヒットの兆しと伝えて来たのだった。しかし、これとか『万引き家族』とか全く関心がなく(とくに本作は、驚くべき達成レベルの『エルミタージュ幻想』『凱里ブルース』を初め、近年ビデオ・デジタル化を期にこの手の長回しが売りの作品がやたら増えてきたせいで今更というかんじ。)、鳴物入りとなったTV地上波放送へも鑑賞も録画もパスしてきた。
基本無料の近場の上映ということで、体調も3週間を要したが戻ってきたので観ることに。確かに、映画ファンが厳しく観ると、問題外の作品であるが、微笑ましいちっぽけだが共感・納得・お笑いポイントを網羅しているし、小難しくない人のいいコメディ・タッチなので、和み目くじら立てず許してやろうというかんじ(偉そうで嫌だが、観客特権だ)。何より、照明やカメラが向き変えて突っ走る方向(後でちゃんとフォロー入るも)に問題点あるも、フォローの(通算)距離とスピード・回り込みから寄ってく退いてく自在さ、時折縦めに決まる図、途中傾いたFIX挟んで素早いパン繰返しと小刻みズーム前後を主調とした作風に切り替わる(劇中のカメラマン交代の)メリハリ(前半の終盤、急に集中・収束度UP)、ラスト・タイトル下の本当のメイキングでもわかるが、大したカメラマンで、それ自体の映画達成度は拍手ものだ。
当初出演・参画予定のない監督一家3人の緊急or強引参戦を中心とする、アクシデント乗りこえというより、全体にもたらす活力UPが心地いい。ただ、CS開局番組生放送ワンカットで流れた作品も、後半のそのメイキングというより細かい裏事情・独自味わいのつぼの解説(繰返し「ポン」やシナリオ逸脱・切り抜け・グレードUP等々結構笑えるが)も、最終カメラを誰が担っているかという(作家が自己に問うだけでいい)問いかけ、作品を突き詰めて作る時、避けられない作家姿勢からの倫理観が決定的に欠落している。後半こそは、その問題も含め、ワンカットで撮られるべきだったのだ、実現したら恐るべき緊迫と手応えが生まれてた筈とこっちも勝手に思う。観る前、そういう作品と勝手に了解してしまっていた。2カット+αとすべき作品だったのだ。観客におもねり、自己と創作モラルに甘い。でも、創る側の人柄?も何となく感じられ、嫌いということでは全くない。点数を甘くしたのは先にも述べたが、ラストの実際の撮影風景メイキング(広角)での、腰を低くしたまま、考えられない動き・足の運びを中断なく続けるカメラマンのうしろ姿に心底、こいつは本物のプロだとひきこまれたからだ。
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