なっこ

遅いしあわせのなっこのレビュー・感想・評価

遅いしあわせ(2017年製作の映画)
2.9
あらすじ通り安心の展開。それ以上それ以下でもないのかもしれない、
けれどこの“遅いしあわせ”というタイトルへと終着するまで健気に生きるおもん(檀れい)を見守るようにして見入ってしまう。

冒頭の雨宿りのシーンが素敵。

ざあざあ降ってくる雨に長屋の軒先に隠れても裸足に下駄、冷たい雨が足の指の先にかかる。
長屋の室内で桶作りに集中していた重吉(加藤雅也)はようやく雨に気付いて戸を閉めようとしてはじめて雨宿りの女性に気がつく。傘を取り出して一度開いて穴がないことを確認してからすっと彼女に差し出す。
すぐに止みますから、とその申し出をそっと断る檀れいの声の美しさに、私ははっとした。ほらね、とばかりにやがて止む雨。その時までわずかな時を過ごすふたり、凛とした彼女の声は自立した女性という印象を残した。

身内に感じる情は断ち難い、それが裏目に出てどちらの為にならないことも。褒めると認めるは、質が違うように、甘えは簡単に世を舐める未熟さを生んでしまう。甘えを許す愛情は必要だけど世を生き抜く強さには厳しさという違う質の愛情も必要だ。そのバランスの難しさ。
ヒロインのピンチにたっぷり間をとったように現れるヒーロー。無口で無愛想で、でも立ち姿には隙がない。かっこいいなぁ。

遅い幸せの訪れを、信じて待つのが良さそうだ。
なっこ

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