ベルサイユ製麺

愛しのノラ 幸せのめぐり逢い/愛しのノラ 幸せをはこぶ猫のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.6
た、タイトルが既視感バリバリのミキシングビルドになってますが、そんな事はどうでも良くって、とにかく猫映画なので観るor Dieなのです。
…猫映画の主役猫が白猫なのってちょっと珍しくないですか?


質素で味わいのある借家(決めつけ)に住む夫婦。夫の朔実はうだつの上がらない脚本家で、主にテレビドラマなどをやっている。それだけでは当然食っていけないので共働き。子供は居ない。代わりに数年前迷い込んできた白猫を家族として迎えた。名前はシロ。活発で、目標をロックオンするとミサイルみたいにすっ飛んでいく。フラッと外に出て行って、遊び飽きたらニャーニャー鳴いて窓をペロペロする。

朔実は11月から日記をつけだした。この映画は、そこに記された二人と一匹の日々の暮らしを朔実が読み上げる形で進行します。

六畳の和室、PCに向かいドラマのプロットを書く朔実。モチベーション低い…。ソリティア、命がけの趣味の競輪。捗らない。
プロットをなんとか書き終えるが、つまらん…。ちょっと目を離した隙にシロ様がキーボードの上に!あ、あー!…止む無く書き直したら…マシになった。

酔い潰れ、大金が入った財布を無くした朔実。ついシロ様に辛くあたってしまう(※実際にはそれらしい描写はありません。御安心を!)。…後日警察から電話があり財布が見つかった!…シロ様に高い猫缶を買ってあげた。


…と、こんな感じで、だらしない脚本家のおっさんと、寛大な奥さんと、白い猫の日常がダラダラ描かれます。中盤までホントに何も起こりません。
…だが観れる!勿論シロ様の力によるところは大きいのですが、この夫婦の肩肘張らない日常の描写に妙に惹きつける力があるんですよね。かと言って猫と戯れて安穏としているだけかといえばそうでも無くて、妻に大病の疑いが浮上したり。或いはある日二人でテレビを見ているシーン。流れているのは“相模原障害者施設殺傷事件”の特番…。呑気な日常と表裏一体の暗い影が、この生活が永遠ではない事を予見させるようです。


ドラマの脚本の締め切りが迫るある日、執筆中の朔実にちょっかいを出してくるシロ様。止む無くお外に出てもらう事にした。
…それからシロ様は帰ってこなくなった。


物語の大きな山場は、迷子になったシロ探しです。夫婦であちこち探し回り、ネット迷い猫掲示板に登録して、ポスターを貼って…。居なくなって初めて分かる、家族の大切さ。
…まあ、ありがちと言えばそうなのですけど、この作品の特徴は意外なアンチクライマックスぶりに有ります。流石にオチとか書きませんが、“大感動!4回半泣いた!”って事は無い代わりに“見なければよかった…”って落ち込むような事もありません。強いて言えば、“嫌じゃなかった”。例えで逆に分からなくなりそうですが、『ハード・コア』の原作者いましろたかし先生の近年の日記漫画のような味わいが有りますのよ。

監督、初めて観る方だったのですが、普段はポルノ映画を撮られているようです。道理でシロ様が肉感的…ではなくて、観るものの生理に訴えるような静かな波の立て方が巧みなわけです。エンド曲、エンケンの『カレーライス』。染み渡りますなぁ。🍛🎸😇
ちなみにシロ様の代わりにしばらくの間、迷い猫クロがやって来ます。この仔も可愛い!よってネコネコメーターは2🐈ですよ。お得!