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オクラを買いに行かせたらのCisaraghiのレビュー・感想・評価

オクラを買いに行かせたら(2013年製作の映画)
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面白かったー!二人のナイジェリア人の兄弟がロンドンのペッカムという移民の住む地区をずっと歩き回るこれぞまさにロードムービー。原題はGone Too Far、『オクラを買いに行かせたら』という邦題が珍しく原題を超えるスマッシュヒット、コミカルな感じがピッタリ。"帰って来ない鉄砲玉"と下の句をつけたいところ。

ジャマイカ系の黒人がアフリカ系を敵対視する話だけど、ジャマイカ系の高校生アルマーニとレイザー、特に諸悪の根源アルマーニが小学生並みにバカ、あまりにバカ過ぎてこの映画を人種差別ものというカテゴリーに入れるには忍びないほどレベルが低い。要するに単なるイジメっ子。二人に追随するパリスともう一人の男の子も小中学生あるある、アルマーニのバカさ加減に気づかないで入れあげる主人公のイェミも同類。アルマーニとレイザーに支配されていた3人が、支配されていたことに気づいてそこからどう反旗を翻すか、という話でもある。
 大人っぽく見えるけど、この子たち、『サニー』の韓国人女子高生たちより年下か同じくらいなんだよね…。

主人公のイェミはナイジェリア生まれロンドン育ち。お母さんはバリバリナイジェリア訛りで、ファッションもド派手なアフリカンファッション。幼い時にナイジェリアを離れたイェミは、ナイジェリアの言葉ヨルバ語を聞いて理解は出来るが話せない。

小学生レベルの高校生たちのところへ、長らく離れて暮らしていたイェミのお兄さんイクダイシがナイジェリアからやって来て参入。お兄さんはやっと念願のビザが下りてロンドンに来られ、お母さんや弟と一緒に暮らせるようになったことが嬉しくて仕方ないのだけど、お兄さんを歓迎できないイェミは、ナイジェリア人丸出しのお兄さんと連れ立って歩かねばならないことが恥ずかしくて仕方ない。そして悉く冷たく当たる…。
 あー、わかるなあ、こういう気持ち、その恥ずかしいという気持ち、自分にも思い当たるフシがある。でも、その態度はダメだよイェミ、あんまりだよ、と観てる方も説教したくなる。でもまだ16歳くらいだものね…。
 ニコニコして温厚で人が好さそうだからナメてたお兄さんが実は強いとわかった途端、態度がコロッと変わるイェミがホント子供なんだけど、まー、人間そんなもんかな?

ロンドンの移民地区で、ジャマイカ系がアフリカ系にマウンティングするなんて客観的に見れば意味なくない?と思うけど、アイディンティティーの問題は外から見てそんなに簡単に言えることじゃないのかな、とも思う。
 アルマーニは、アフリカ人は黒人を奴隷として売り飛ばしたと言ってアフリカ人を非難するし(※)、レイザーの友だちは人類の祖先はアダムとイブだと思っていてアフリカ発祥だということを知らず、差別が無知から生じることも示している。どこの国でもあるある。でも、小学生だから無理もない…。そして、黒人の間でも肌の色の濃淡による差別はあるらしいとわかる。あと、ソマリア人の扱いは何なのか?謎。
 最後は御大的なラッパーが登場して黒人皆きょうだいみたいなところにおさまるけど、"人類皆きょうだい"にはならないんですよね…。

でも、楽しい映画だったー!最強なのは何と言ってもお母さん!小学生なんで(くどい)。そして、ナイジェリアでは白いソックスとベランダサンダルというファッションが流行ってるのホントですか?(2013年の映画です)

音楽少なめだけど、アフリカ系の音楽(多分)もコミカルで楽しかった!でも、全部でなくていいからラップにも字幕をつけて欲しかったな。きっといろんな意味が込められていると思うから。特に最後の歌の歌詞は知りたかった。
 途中のラップに突然出てくるジャパニーズアスって一体何なんだろ?

映画大国ナイジェリアの俳優でお兄さん役のOCウケジョさん(Filmarksのクレジットに名前がない…)は当時33歳くらい、さすがにこれから大学に入るというイェミのお兄さんにしては貫禄ありすぎましたね~。

いろんなマイノリティの人が登場し、ペッカムのストリートビュー的にも楽しめて満足、満足。

※後で調べたら、アフリカ人がアフリカ人を奴隷として売ったというのは本当だった。その根っ子には、今も絶えないアフリカの部族闘争があるらしい。知らなかった…。
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