マクガフィン

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅のマクガフィンのレビュー・感想・評価

2.5
ポール・ゴーギャンのタヒチ滞在時代を描く伝記ドラマ。

タヒチ生活は健康的にも経済的にも厳しい状態で、理想郷と呼べる環境とは程遠いものである。それ故に、ゴーギャンの絵の特徴である明るい色をメインとした大胆な色づかいとは異なる自然美は、異国情緒ある楽園の渇望を脳内でイメージしたことと組み合わせたように感じた。

淡々としていて抑揚に欠ける映像に終始して、タヒチならではの自然美も特になく、心象背景なのかゴーギャンの経済や体調を反映したのか分からない淀んだ情景が多いことで情感が湧かなく、熱帯地域のエキゾチックも少なく、四季がないのか時系列が子供が授かったことぐらいしか分からない構成は退屈。

ゴーギャンの現地妻となる女は、タヒチの官能さを肉体の形に象徴的具現したような耽美的な美しさだが、出会ったきっかけと結婚する理由が意外とあっけなく、タヒチと現地妻に感化された説得力が薄い。パリ文化と対照的な自然情緒溢れるタヒチ文化の描写が弱すぎることが作品の構築に失敗した所以。

タヒチは当時はフランスの植民地であり、今もフランス領である。商業化に伴う西欧文明に侵食していく模様が豊富な物資や医療やキリスト教化することなどから、伝統的な文化や宗教が徐々に失っていくことで、タヒチの光と闇を焙り出す。
その楽園が侵食することに憤慨するのだが、それがゴーギャンの国であるフランスなことが何とも言えない皮肉めいており、文明と経済と宗教の相違関係に考えさせられるが、その重要なことが決して上手く描かれていないのが残念。

作品のテーマがあやふやで全体的にわかりにくく、ゴーギャンや芸術や時代背景をある程度理解していない人には退屈に感じるのでは。
102分が非常に長く感じた。