冒頭、主人公レイノルズの身支度のシーンでは彼の潔癖症で完璧主義な人柄が端的に紹介されます。
もう1人の主人公アルマ。この映画はこのアルマの目を通して女性視点を獲得している点で他のポール・トーマス・アンダーソン作品とは一線を画しています。また、PTAがこれまで描いてきた父と子の物語とは対称的に、この2人は母と子の関係になっているようにも受け取れます。
結婚を境に従属関係の逆転が発生し、まるでオート・クチュールの洋服を脱がされるように、 2人の本性がそれぞれ顕になります。
レイノルズ視点ではバッドエンド、アルマ視点ではハッピーエンドに、観客の感情移入の対象によって結末が180度変わってしまうように見えます。しかし、この結末が一筋縄じゃいかないのは、レイノルズが自分の身に降りかかるバッドエンドを受け入れてしまっているからです。そのおかげでこの物語の結末は何重にも複雑なものになっているのだと思います。
2022/07/31 1回目
【2022年278本目】
