MasaichiYaguchi

ファントム・スレッドのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
3.9
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」以来、ポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デル=ルイスが再タッグを組んだ本作では、1950年代のロンドンのファッション界を舞台に、男女のスリリングでデカダンな恋愛劇が繰り広げられる。
ダニエル・デル=ルイスが演じるレイノルズ・ウッドコックはロンドンで活躍するオートクチュールの有名デザイナーなのだが、生活というか人生を仕事に賭けていて、完璧主義者でもある彼はそれを中心に全てが動いている。
初老だが身なりが良くてハンサムなレイノルズは女性達にモテるのだが、マザコンでシスコンな彼が見初めるのはドレスのモデルとして、新たなデザインを生み出す「ミューズ」のような身体を持つ女性。
だから、彼がその女性にデザイナーとして興味を失うと体よくお払い箱にしてしまう。
そんなエゴイストなレイノルズは、ある日郊外のレストランでウェイトレスとして働く「理想的な身体」を持つアルマと出会う。
2人の出会いは始めは夫々に良い化学反応を起こし、レイノルズは素晴らしいデザインを、垢抜けなかったアルマは美しく洗練されていく。
それでも蜜月期間に終わりは来る。
この作品を見ると、男女の恋愛は甘くロマンティックな面ばかりだけでなく、「駆け引き」であり、ある意味、愛を勝ち取る為に権謀術数を駆使した闘いなのだと思う。
蜜月期間が過ぎ、愛が失われつつあることを悟ったアルマは、一か八かの秘策を講じる。
果たしてアルマの一計は、仕事優先のマイワールドにいるレイノルズを彼女がいる血の通った「現実世界」に引き寄せることが出来るのか?
第90回アカデミー賞衣装デザイン賞に輝いた本作は、1950年代のオートクチュールドレスの美しさだけでなく、夫々のシーンに漂う感情までもドラマチックにするジョニー・グリーンウッドの音楽に彩られ、純愛とも愛の狂気とも言えるような恋愛劇を痺れるようなタッチで浮き彫りにする。