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ファントム・スレッドのいとJのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
5.0
「オスカー受賞は納得の衣装デザイン、フィルム撮影による味のある映像、ゆったりとした美しい音楽も素晴らしい、そしてラストは心の温まるロマンティック・コメディの傑作です……」というのは僕がこの映画を人に勧めるときに使いたい言葉で、予告も確か「オートクチュールのドレスがなんちゃらで禁断の愛の物語……」みたいなのだったと思うが、もちろんそういう言葉づかいのふさわしい上質な物語であることには間違いないけれど、一言でこの物語を形容するなら、「キモい!」だ。これに尽きる(もちろん語りどころはたくさんあるけれど、あえて言うならば、ということで)。終盤、あまりのキモさに気づいたときは「うわーこれはない!キモい!ほとんど犯罪だよこれ!」と悲鳴を上げそうになった。エグいシーンがあるわけではないのに、こんなにキモいラブストーリーを書いた監督には感服。よく言えば共生的な愛……いや、やっぱりもちろんそうは思えず、寄生し合うような、蝕み、蝕まれ合う関係(そしてその寄生方法が凡人には理解できないほど常軌を逸してキモいのだ)。しかも着想元は監督の実体験だというのだから、なおさら恐ろしい。恐ろしすぎて、笑えてしまう。ロマンティック・コメディ、いやホラー……やっぱりコメディ?みたいな。僕はこの映画を観たその日の夜から体調を崩して、今日はバイト先で出勤直前に靴紐が切れました(実話)。みんなこのキモいラブストーリーのせいだ!傑作です。
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