Oto

ファントム・スレッドのOtoのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
3.7
美しい衣装と裏腹に、凄く怖い映画だった…。

「仕事か家族か」って話はよくあるけどとても不気味な幸せに見えた。
自分の時間を奪われたくない夫、仕事より自分を愛してと欲する妻。どちらも自分が優位に立ちたい。そう考えると奇怪な夫婦に見えて、二人の欲って実は普遍的なものなのかも?

でも怖かったのは、レイノルズの寡黙の中に秘めた厳しさ・寂しさと、曲げられない信念。それを壊そうとするアルマの異常性。一番怖いのは、それを受け入れてしまうレイノルズ。降参(敗北宣言)して結果的に幸せになったけどそれでいいのだろうか...幸せと快楽は違うらしいけど...

ファッションへの関心が薄いからオートクチュールとかよくわからないけど、撮影は面白かったな〜夕食でファンが2人来たのを鏡の反射で映してたの最高。
あと印象的なのは食べ物の使い方。ラスト、きのこはいいけど、バターもちゃっかり入れてるところにアルマの「抜け目なさ」と、監督のセンスを感じる。
音楽も不協和音から美しいピアノまで使い分けててよかった。ジョニー・グリーンウッドさすが

PTAの作品あまり得意ではなかったんだけど、映画館で観るとどの間にもどの画面にもしっかり意図があるんだとわかってよかった。採寸のシーン好きだな〜


(解説聞いて
題の訳が「幽霊の縫い糸」になるように、幽霊の映画を作るというのが発端だったけど、むしろ幽霊ではなく人間の怖さになっていて『ゴーンガール』に近い(元ネタは『レベッカ』らしい)。キューブリックと同じく監督自身が幽霊が怖くない(むしろ会いたい)と思っているからゴーストホラーは作れなかったらしい。

監督自身が父親に囚われているからずっと父親に拒絶される映画を撮り続けていた(『マグノリア』『ゼアウィルビー〜』『ブギーナイツ』...)けど、家庭ができて仕事人間だった自分を客観視できるようになったから作れた映画かもしれない。それゆえに今作は母や妻がテーマだし、未だに社会で女性が軽視されてしまうということはあるだろうから、現代に作る意味はあるのかな〜と思った(『快楽』(1951)とかと同じような話だとしても)。
個人的な作品だけどちゃんと普遍性あるのがさすが。

ダニエルは役にのめり込む人だから、仕事ばっかでいいのか?ってなって俳優引退宣言しちゃったらしい笑。