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ファントム・スレッドのnagashingのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
3.5
端整な顔だちと洗練された物腰のなかに神経症的な幼児性をかかえたダニエル・デイ=ルイスの危うい魅力にクラクラした。被虐性と耽美趣味と男女関係のいびつな均衡はたしかに谷崎っぽい世界。だがこの監督の場合、水面下のスリリングな駆け引きより意味不明で暴力的な感情の発露のほうがよっぽど恐ろしくて笑える。どうしたって「男と女の話」に収斂されてしまう異性関係は、前々作あたりにくらべると平板で色気がない。レスリー・マンヴィルをフェードアウトさせなければまたちがった映画になったはず。近親相姦的な雰囲気をただよわせる姉弟と死んだ母に成り代わろうとする若い恋人の主導権争い、という異様な三角関係が貫徹されなかったのが惜しい。カメラはやっぱりロバート・エルスウィットに任せたほうがよかったと思います。
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