このレビューはネタバレを含みます
ラブストーリーだと思ってたら、ホラーで最終的にはそれが行き過ぎてちょっとコメディに笑
映画で例えると
最初マイフェアレディだと思ってたらレベッカっぽくなって、そっからミザリーになって、最終的にゴーンガールという凄まじい話。ゆったりした映画だけどジェットコースタームービーでもある。
最後凄いところまで連れていかれる感じです。
PTAの映画にしては登場人物も少ないし、話もわかりやすい。
画も格調高いし、音楽は優雅でアカデミー賞の衣装デザインもまあ豪華でビジュアル面だけでも飽きない。
ただ含みは多いというか考察しがいのある映画。
最初圧倒的に上の立場にいたウッドコックをアルマはどうやって自分のものにしていったのか、ウッドコックはどのタイミングでアルマに心を飲み込まれてしまったのか。
序盤の朝食シーンや身支度シーンでウッドコックはきっちり自分のライフスタイルのルーティーンが決まってるのがわかる。
特に食事はモタれるものは嫌がる。
自分のペースを乱されるのも極端に嫌う。
アルマは最初そんな男の仕事用のマネキンとしてスカウトされてしまうのだが、それでも健気に彼に惹かれていく。
そんなアルマがウッドコックを支配してやろうと考えたのは2人きりでサプライズ誕生パーティーをやろうとして取りつく島もないくらい拒否られたあのくだりだろう。
あそこまで否定されても愛想を尽かすんじゃなくて、自分が支配しやすい男に変えてしまおうという発想が凄い笑。
毒キノコと幽霊がターニングポイントかな。あと、ラストのバターたっぷりの料理。
毒キノコ食わされて介抱されてからあんなに簡単にアルマにコロッといってしまって結婚しちゃう理由は、ウッドコックが病床中に見た幽霊が関係してるかも。
ウッドコックは少年時代に死んだ母親の髪を形見としてスーツのポケットに入れてるくらいのマザコン。タイトルのファントムスレッドの意味は幽霊の縫い糸だし。
髪が縫い糸なのか。
たぶんずっとお母さんの幽霊が彼についていたのか、もしくはウッドコックがずっと脳内で母親の幽霊がいると思い込んでいたのか。
しかし中盤スクリーンに現れた幽霊はアルマが介抱しにウッドコックの部屋に入ってきた途端消えてしまい、そのあと全く出てこない。ここでウッドコックを支配してきたものが母親からアルマに変わってしまったという意味だろう。守護霊が消えてしまったみたいな感じかな。
おかげでただのマネキンにしか見てなかった女と結婚し、彼女が年末遊びに行ってしまったら気になって仕事も手につかず、思わず様子を見に行ってしまうという依存ぶりまで晒してしまう。
で、最後は中盤のサプライズパーティーであんなに嫌がってたバターを入れまくったオムレツを満足気に食べて完堕ち。
あと、あのお姉さんもずっと結婚せずにウッドコックの面倒見てきたんだろうけど、あの年でとうとうその立場を奪われてしまうという。
男女の支配関係の逆転劇とも言えるけど、男を支配してた女が交代したって話にも見えた。
ダニエル・デイ・ルイスは立ち振る舞いからもうドレスデザイナーとしての実力、神経質さを体現してて完璧。ビッキー・クリープスも体のデカさと顔の普通さ、若干のサイコパス感といい、はまり役でした。身長がウッドコックと変わらないのがまた話に合ってる。