まだ上流階級の格式を残した1950年代、サテンとレースとパールに彩られた絹擦れの音さえ聞こえてきそうなエレガントなオートクチュール、ダニエル・デイ=ルイスの本物の一流デザイナーと見紛わんばかりの佇まい。映画としての様式はこうも美しく格調高いのに、描かれるのは歪んだ愛の物語。
秩序と静寂を是として生きてきた職人気質のウッドコック、変化を求め自身の価値観を他者にすら押し付ける女アルマ(「あなたには無力で倒れていてほしい」の台詞に女怖っとゾッとし通し。)、相対するかの様な二人の関係の化学変化は理解はできないけれど納得はできる。異常な双依存、ともすれば待っているのは破滅でしかないけれど、両方が幸せならこれもまたひとつの愛の形ではあるかと。
ダニエル・デイ=ルイス演じるところのイライラ・モヤモヤ・でも最後には女に引きずられてしまうウッドコックの姿がなんか可愛くて・良・い。名優。引退勿体無いですよねー。
グリーンウッドの美しくもこもった旋律に逆に画面にざらつきを感じた。二人の不協和音を暗に表現したPTAの計算？だとしたらすげぇ！
