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ファントム・スレッドのmのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
5.0
芸術家とミューズの関係性を描く映画かと思いきや、夫婦関係のある種の真髄を描く映画でもあった。
何事にも毒が必要で、搾取の一方通行では関係は成り立たない。女が男の美意識や生活を破壊し、やがて新たな境地に辿り着く。複雑な関係性が素晴らしい。

ダニエル・デイ=ルイスは勿論御見事で(そういえばこの人をスクリーンで観るのはこれが最後なのかとふと気付いて哀しくなる)、実質主人公の初めて観たヴィッキー・クリープスが完璧!姉役のレスリー・マンヴィルも効いている。

今回は(ノンクレジットで)監督自身が撮影監督も兼任しているので、フィルムへのこだわりも思う存分爆発。いざという時に華麗に動くカメラワークや柔らかくさり気なく美しい照明も優れている。
ジョニー・グリーンウッドの時折不穏さが入り混じる優雅な音楽も最高。


終盤のオムレツシーン〜ラストがあまりに素晴らしくて、あの美しいラストカットは個人的には最高のハッピーエンドだった。狂気じみた作家性とエモーショナルな普遍性とが見事両立し、自分の中でのポール・トーマス・アンダーソンのベスト作品を更新。
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