幕のリア

ファントム・スレッドの幕のリアのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
3.9
愛を呪縛の針で縫いつけるのか。
運針は細かく等間隔に。
縫製不良はご法度。
ステッチが歪み出したら最後、針穴が残るから縫い直しは出来ないよ。
肉体を虐めることになっても、悪いパーツは取り除き、心を穏やかにして、新しいパーツを縫い直そう。

業界物映画として、どんなディティールが見れるものかと興味津々。
オートクチュール、トルソー、採寸、生地見本、オーガンジー、ボビンレース。
ダニエル・デイ=ルイスが一年の修行を経て臨んだ作品としては、洋服作りに対する異常なフェティシズムは不足気味であったかとは思う。

毒を以て毒を制す。
いや、毒を盛って毒を正す、か。
歪であっても体に響く愛情表現は心にも届く。
セレモニーの後に訪れる束の間の停戦と安息。

毒なんて喰らい過ぎて、もはや腹も壊さないけど、耐性がついた訳ではないし、そりゃ腹痛は避けられないし、トイレとベッドで死んでる時間は長くなる。
夫婦喧嘩もオノロケも犬も喰わないと思うけど、PTAその人の人生と今現在をダニエル・デイ=ルイスに演じてもらったんだ。
ファントム・スレッドならぬファントム・コンテかファントム・フィルム。
人生で後何本くらい撮れるのか。
今回で引退とされるダニエル・デイ=ルイスと組んだ本作を昨年亡くなったジョナサン・デミに捧げたPTAに共感。

2018劇場鑑賞53本目
幕のリア

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