【恋愛上級者と恋愛倒錯者は紙一重💄】
オートクチュールを題材にした映画だから、きっと美しいものをたくさん見れるんだろうな…てのんきに構えていたら、とんでもない映画だった。
物語がどんどんあらぬ方向にいって、あーね、人の愛し方は人それぞれだもんね。こういう愛もあるよね、メンヘラてことでいいのかな?と怒涛の後半は困惑のラビリンスへ。
主人公がオートクチュールのデザイナーなのも「オートクチュール(=一点物の愛)」と掛けてるんだろうな。そのくらいオリジナルの愛し方だった。
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たぶん女性ならピンとくると思うんですよ。ヒロインの女性をみて「あの娘は大人しい顔して、大したタマだよ(泉ピン子風)」と。それも割と最初の方で。
初対面の男性への微笑み方、採寸するときの身体の許し方。お姉さんに取り入ったのも、彼にとってのキーパーソンだったからだろう。
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主人公のおねーさんは、すごく大好きなキャラ。弟がドレスデザインのプロなら、姉は香りのスペシャリスト。劇中には出てこないけど、きっと「ドレスを惹き立たせるための香り」を担当しているんだろう。天才の弟を支えるだけの実力がある、ものすごく優秀な姉。あの目だけで律する強さはとても魅力的。
二人姉弟の阿吽の呼吸。そこには替えがたい絆が存在していて、その中に入り込むのは至難の業。これまでの恋人や妻たちは主人公のことを理解できずに苦しみ去っていった。
主人公の織りなすドレスはどれも完璧で、その原点は「生活感のない生活」だったり「静寂さ」だったり。女性たちは「素敵なドレスを作ってくれるあたしだけの王子様」とのギャップにさぞかし驚いただろう。
そこへ今回のヒロインが登場し、良くも悪くも生涯忘れられない思い出になったと思う。もうまともな恋愛はできないだろうな。
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この映画を観て、ミスチルの曲『また会えるかな』を思い出した。
歌詞の一節をご紹介。
「また会えたなら、次会う時は
君が悩み持ってたりすりゃいいな
守りたくとも君が助けを
必要としてないんじゃまるで意味ないから」
…そうなんです。
この人に頼られたい!だから相手に不幸なことが起こってほしい!!の心理なんですね。
ちょっと歪んだ愛だけど、分かる人には分かっちゃうんじゃないでしょうか。
あなたに尽くしたい。弱ったところに漬け込みたい。そして自分があなたを大切に思ってることを実感してほしい、的な。
少しでも「やばい、分かっちゃう…」の人は、ぜひこの映画を観てほしい。自分がいかにヤバイかが分かるから。
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この映画の感想で、その人の恋愛観が分かる気がする。