ペコちゃん

ファントム・スレッドのペコちゃんのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
4.8
あらすじを読んでポスターを見た時の第一印象は、この仕立て屋の男は意地惡そうだなあ~。しかし、違った!規則正しく毎日のルーティーンを遂行していく。その姿は美しい。こうした美意識の高さが美しいドレスを作ることに繋がるんだ。そうした部分では尊敬する。

しかし、氣難しい…。自分だけの空間を乱されることを嫌うレイノルズ。お茶を用意して持っていったアルマに対して最後には「邪魔された事実は残る」と捨て台詞をいい残した。なんてお子様なんだろう!まるで自分を見ているようでドキリとした。

食事中のアルマは食器をカチャカチャ、音を立ててうるさい。朝は大事な時間。心静かに過ごしたいレイノルズからするとなんて鈍感な女なんだろう、と忌々しく思うのは仕方がない。

しかし、レイノルズはアルマを手放すことはしなかった。なんでだろう。今までの女はレイノルズから一喝されたらそれ以上食い下がることはしなかった。そこが彼女とは違うところ。

愛とは何か…。言ってもわからない人間には、強硬な手を使ってでも思いしらしめる。毒キノコを盛ることは、レイノルズを想っての愛のムチだとよんだ(…違うかなあ~?)そこまでできる人間はそうそういないと思うんだ。

レイノルズは、踏み込まれたくない心の領域があってそれがアルマとの壁になっている。レイノルズの仕事のやり方について「あなたはゲームをしているだけ」アルマのこの言葉は本質をついていると思った。レイノルズに比べると鈍感で無神経に見えるアルマだけれど、本当に大切にすべきものが何であるかをわかっている女なんだと思った。

だからレイノルズは、毒キノコを盛られながらもアルマに身を委ねた。心身が弱りながらもどこかで安らぎを感じていたのでないだろうか。アルマのやり方を受け入れた時にレイノルズは、恐怖を乗り越えることができる。一皮剥ける。その時には、仕事のやり方も変わっていくんだろうなあ~と想像したりした。