Ｑ,ダニエルデイルイスさん、なぜ引退を決意されたんですか？
A,この映画を撮っている時に今まで感じたことのない深い悲しみに襲われたからそしてそれをぬぐい去ることができなかったから。
ネットの記事で見つけた彼の言葉を、観終わったあとなら理解できる気がしました。
老いてなお美しい仕立て屋のレイノルズが、彼の創りあげたオートクチュールの城の中で無力化していく様をただ見ているしかなかった。幼くして失った母親の幻想への強すぎる愛、完璧さに拘り続ける狂気に溺れてしまいそうな彼を、アルマは全く違う狂気で呑み込んでしまったから。彼らは｢愛｣を、払うべき代償や、乗り越えるべき困難には全て耳をふさいで手に入れてしまったように思えました。
シューベルトやドビュッシーに彩られた世界は確かに美しい。レイノルズに贈られてアルマが身につける衣装は全てが特別に見える。けれど、なぜだか入り込めない、悪い夢だったのと終わらせてしまいたいような。
けれどこれだけ長く書き連ねてしまうのはきっとこの映画に魅せられてしまったということなのかも。とにかく退屈とは無縁の二時間でした。
Phantom Limb幻肢《切断して存在しないのにまだ実在するかのように感じる手または脚》
Thread がこれを読み替えたものだとしたらつまり？
深読みをいくらでも許してくれそうなののタイトル、ぴったりだと思います。
