はる

ファントム・スレッドのはるのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
5.0
完璧。ひょっとしたらこれまでのPTAの中で一番好きな作品かもしれません。ラブストーリーですが、当然PTAの描く愛は一筋縄ではいきません。
劇中のアルマですが彼女は代理ミュンヒハウゼン症候群の一種であると思われます。なぜこんな小難しい言葉を知っているかというと以前観たとある作品で非常に似たケースがあってその時少し調べたんですよ。かなり屈折していますがコレも愛の形なのですね。ただアルマはそういった精神疾患である可能性があるとして、レイノルズの行動の方が私は衝撃的でした。全て理解した上で彼女を受け入れるシーンは鳥肌が止まらず本物の狂気的な愛を見たように思いました。
冒頭のレイノルズが朝支度をするシーンはこの男がどういう人間なのかスムーズに観客に分からせる圧倒的に優れたシーンです。とにかく間を空けないPTAのスタイルは過去作品では露骨さを感じる事もありましたが、今回はそれが一切ありませんでした。足音が印象的、人物の心理状態が足音で分かる。怒っていたり、優しい気持ちだったり。画作りに一切隙がなく完璧だと思います、どのシーンを切り取っても本当に美しい。
ダニエル・デイ=ルイスは『ゼアウィルビーブラッド』に引き続き主演を務めていますが、あまりにも演技が素晴らしい。怒りや苛立ちの感情の巧さ、惚れ惚れします。
とても面白かった大傑作で間違いありません。
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