このレビューはネタバレを含みます
1922年は大正11年。
そう考えると、すっごい昔感があるので作中で描かれるあれやこれやがとても腑に落ちる。なにしろ世界が色々とフワッとしている。農家の暮らしぶりも、警察の捜査も、息子たちの駆け落ちも、主人公の落ちぶれ方も、いちいちすべてに「なんで?」というところがある。
ざっと100年近く前なのだから当たり前の話なのだけど、なにしろ作中で描かれるのは殆どが農家の暮らしで、当時の日本に較べれば遥かに近代化の波が寄せてきている感じがあるし、農夫の格好も日本であればああはならない。
だから、そんなに古臭いように見えないのにとても古い話なので違和感がある。
字幕なしで解るぐらいに言語的にも文化的にもアメリカを理解している人ならば、この映画をもっと楽しめると思うけど、ちょっと説明不足な感じが否めなかった。
ただ、根底のテーマは普遍的なもの。追い詰められて、人を殺して、今度は罪の意識に追い詰められる。本質的には弱い父親がギリギリまで虚勢を張るけれど、息子が不在になってからは虚勢を張る相手もいなくなり、すべてが悪循環に陥り、とうとう妻を殺してまで守ろうとした農場も失う。
すべてをなくしてしまう。その過程で象徴的に現れるのがネズミなのだけど、これが少し解らない。妻そのものの幻影も見えるのだし、巻き添えにした牛の方に罪の意識を感じるのなら解るのだけど、ネズミはただただ妻の遺体に群がっていた“気持ちの悪いもの”だった筈。ところが、父親は妻以上にネズミに怯えているように見えた。
農家としての害獣であることの象徴にしても、やや強調され過ぎのきらいがあったように思う。それともアメリカではネズミにそれ以上の含意があるのか。あのミッキーやジェリーやピカチュウが大好きなアメリカ人は、ネズミになにを思うのだろう。やっぱり、文化の壁に阻まれている気がする。
キング原作の物語は、時代設定が古くてもその辺りに違和感を感じることが比較的少ないことが多かったから、この話はどうにも。それから、なによりもこの陰気な話が好みじゃなかった。
レモネードは(冷たくはなくとも)美味しそうだった。