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ドント・ウォーリーのピカルのレビュー・感想・評価

ドント・ウォーリー(2018年製作の映画)
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【柔らかくなる話】

『DON'T WORRY』観ました。

『GOOD WILL HUNTING』を映画館で観られたなら.....

何度夢見たことだろう。
その夢が、形を変え、叶うことになるとは。

『GOOD WILL HUNTING』の監督であるガス・ヴァン・サントの最新作『DON'T WORRY』。

この映画には隠しても隠しきれないバックグラウンドがあった。
『GOOD WILL HUNTING』での名演技が印象に強いロビン・ウィリアムズが熱望した映画なのだ。

この事実を教えていただいたとき、心が踊った。
『DON'T WORRY』を観るのは必然のような気もした。

主人公は車いす生活を送る風刺漫画家のジョン・キャラハン。
自動車事故により下半身が麻痺、アルコール依存症に悩まされる苦悩の人生。

だけど、彼の日常はオレンジ色の髪のように眩しく見える。
街を高速の車いす運転で移動する様は、立って歩ける人々よりも軽やかだ。
勢いをつけすぎてくるっと転んでしまったら、漫画よりもコミカルだと笑えばいい。

本編は実話をもとにしていて、ドキュメンタリー風の演出もある。なのに、力まずに観られるのは、タイミングよく登場する風刺漫画がすべてを笑いで包んでくれるから。黒ペンで描かれた線の心地良さを、初めて実感する。

周りの人から愛されるチャーミングな主人公を観たからって、急に優しくなれるわけじゃない。だけど、彼のユーモアに触れるつれて少しだけ心の棘が丸くなる。怒りも柔らかくなる。

そのときだった。

ジョンの笑顔の奥にロビン・ウィリアムズを見つけてしまったのは。
あの、一度出会ったら忘れられない、光の粒がはじけるような笑顔。
主人公のジョン・キャラハンと、彼を演じたホアキン・フェニックスと、誰よりもこの映画との出会いを待ち望んだロビン・ウィリアムズが重なった瞬間。
ガス・ヴァン・サント監督は、こんな形で人と人との触れ合い方を描きたかったのかもしれない。

エンドクレジットの
“Special thanks to Robin Williams”
言うまでもない。
ここが一番感動した。

『DON'T WORRY』がプレゼントしてくれたのは、困難な人生を乗り切るための答えではなく、世界に心を開くためのヒントだ。それは、太陽よりも寄り添える温もりとして触れてくる。エンドロールが終わっても、心が柔らかくなる音が静かに響いている。