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港町の小のレビュー・感想・評価

港町(2018年製作の映画)
4.0
ナレーションも音楽もない、想田和弘監督の「描写」“観察映画”の第7弾。前作の岡山県牛窓の『牡蠣工場』撮影合間に町を歩き回り、出会った人との会話と猫の様子を中心に映し出す。はじめから何が意図があって撮っているわけでないようなので、観る人に委ねるウエートがとても大きい映画。個人的には唯一観た“観察映画”の前作よりも面白く、すんなりと感じるところもあった。

スクリーンに映し出されるのはお年寄りばかりだけれど、身体や表情に人生の経験を刻印している彼らは皆キャラクターが立っている。皆がマイペースで、やりたいことをやり、話したいことを話す。多少のことで怒ったりしない。他の人とかみ合わなくても気にしない。

そういう人達がお互いを否定せず、受け入れている、というか気にしていない感じ。高齢で家族と離れていても何とか暮していけるのは、そんな雰囲気だからかもしれない。

しかし、町からは人が次第に離れていっている。猫が癒しの存在としてほっこりさせてくれるのだけれど、人の代わりに増えてきているかのよう。モノクロームの映像からは、この町が既に過去のものになってしまったかのような印象を受ける。

自由奔放なお年寄りに生命力を感じる半面、それは確実に失われていく。そういう現象を観察して提示する。観察結果をどう生かすかは観た人次第なのかな。

●物語(50%×3.5):1.75
・町の人を映像にするという点ではテレビ番組『笑ってこらえて』の「ダーツの旅」と同じだけれどテーマと深さが違う、のは当たり前かな。余韻の残る終わり方だった。

●演技、演出(30%×5.0):1.50
・登場してくる人が皆、個性的。こういう人達って自分の住んでいる地域にいるかもしれないけれど、ここまで自由奔放にはできないだろうなあ。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・画の構図が上手い気がした。
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