Smoky

ジョーン・ディディオン: ザ・センター・ウィル・ノット・ホールドのSmokyのレビュー・感想・評価

3.8
日本での知名度はイマイチだけど、夫だったジョン・グレゴリー・ダンと共に、米国を代表する偉大なる知性のドキュメンタリ。

5歳で母親から与えられたノートに文章を書きはじめ『VOGUE』誌のエッセイコンテストで優勝しNYへ(母親からは「あなたなら書けば余裕で優勝よ」と言われたらしい)。現在よりもずっと、女性の活躍が難しかった時代に「自尊心:その源泉とパワー」と題した意見記事を執筆(自分の人生に責任を持つことが、自尊心の源である)。

夫と結婚し、LAに移り、ジャニス・ジョップリンやジム・モリソンといったミュージシャンを皮切りに、当時のヒッピー&ドラッグカルチャーに関するエッセイを全米の有名誌に寄稿。スコセッシやデ・パルマ、スピルバーグといったハリウッドの次世代の才能とも友好を深めた。彼女の家の内装を手掛けたのは、当時は大工だったハリソン・フォードで、この時のコネクションによって後年、映画製作の分野でも成功。

その後は、ニカラグア問題をはじめ、米国政治に関するジャーナリズムにどっぷり浸かり、その鋭い観察眼とクールな文体でディック・チェイニーをディスりまくったりもしたw

さらに彼女の名を知らしめたのは、急病で重篤な状況にあった娘の看病中に、最愛の夫を心臓発作で亡くしてしまい、その数年後に娘も亡くなった後、その体験と魂のリハビリ過程を執筆した『悲しみにある者』の出版。自らの気持ちや精神状態さえも客観的に見つめ、書くことで理解していく様は圧巻。本当に呼吸するように書いた人なんだな…と。

写真からも分かるように、優れた知性に加えて、華奢ながらも美しく凛とした佇まいも印象的な女性。改めて、彼女の偉大さを確認できた。久々に、彼女の本を読もうと思う。
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