大学時代、特に打ち込めるものを見つけることができない自分に嫌気がさしていた典子が、ひょんなことから、近所のおばあさん家で茶道を習い始め大人になっていく、というお話。
黒木華さんの演技と柔らかい表情が、作品の雰囲気にとてもぴったり。お茶を立てている姿はもちろん、カラオケで歌う姿、海辺で踊る姿は、なんじゃこの愛おしい生き物は〜となった。ほわっとしているけど譲れない芯がある典子の性格と華さんが見事に被った。
そしてなにより樹木希林さん。原作から樹木希林さんに当て書きして『日日是好日』が完成したのではと疑うほど。
あの方はお茶を習っていたのでしょうか。ご年齢的に多少齧っていたとしても、体調が芳しくない中、先生役のお作法を完璧に、そしてユーモア溢れる表現で演じていらっしゃった。流石でございます。
今やこの世から引退した彼女がスクリーンの内側にいる。見ていてとても不思議な感覚に陥った。「この歳になると、同じことの繰り返しがどんなに幸せかと思います」というような台詞。まさに樹木希林ご本人からのお言葉に聞こえた。繰り返し素晴らしい作品を作り続けて下さったこと、心から尊敬し感謝致します。改めてご冥福をお祈り申し上げます。
樹木希林さんの台詞を聞くたびに、黒木華さんの表情を見るたびに、遂には草木、雨音を聞くたびに、ジワっと目頭が熱くなった。でも可笑しなところもあり、劇場からはフフッと沢山の笑い声が。心にじわっと温かいものが広がる。
『日日是好日（にちにちこれこうじつ）』
この言葉を抱きしめて、今この一瞬を大切に生きれる大人になりたいです。
