うめまつ

日日是好日のうめまつのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
3.8
一面真っ白な雪景色の中にポツンと立ったような、澄み切った寂しさが残った。空気を吸い込むと鼻がツンとする、冬の豊かさに包まれたような気持ち。そう気づいた時には張りつめていた糸がほどけるように泣いていた。茶道を通して得られる《四季を感じる心》を丁寧に描く過程は素晴らしい。一足飛びに手に入る境地でない事も伝えつつ、その手触りだけは感じられた気がする。茶室でのシーンは、所作や四季折々の設えなどが細部まで行き届き、画面の凛とした佇まいに背筋が伸びるような心持ちがした。

ただそれ以外の、お茶と直接関わらない部分にモヤモヤする。まず黒木華ちゃんと多部未華子ちゃんは対照的な2人って設定なのに、同じクローゼットから選んでいるような服装なのが気になった。お茶を習う女の子は、全員甘めのブラウスに丸首カーディガン羽織って膝丈スカート履いてるとでも言いたいのかい?2人がじゃれ合うシーンもわざとらしくて白けてしまった。フェリーニの『道』はそりゃ名作なんだろうけどさ。。

主人公の描かれ方が何処かから借りてきたような、薄く均等に伸ばされてクッキーの型で抜かれてるような窮屈さを感じる。その型で抜かれなかった切れ端が見たいのに。何より《頭で考え過ぎず心で感じる》というのが主題なはずなのに、感動を念押しするようなシーンには「大丈夫、その手前で充分感じてるよ!」と言いたくなった。あの瞬間《物語を感じる心》が萎れてしまった。もっと時代感や説明的な要素を削ぎ落として、雑味が薄まればきっと大切な作品になったと思う。好きなところと気になるところが綺麗に分離してしまって、この作品の味が自分の中では定められない。
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