あでゆ

日日是好日のあでゆのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
3.6
大学生の典子(は、突然母親から茶道を勧められる。戸惑いながらも従姉・美智子(多部未華子)と共に、タダモノではないとうわさの茶道教室の先生・武田のおばさん(樹木希林)の指導を受けることになる。

変わらない日常が滞りなくあることを是とし、日々周りに感謝しようという今時珍しい価値観をもつ、ゆっくりとした時間の流れる佳作。
全体を通して盛り上がりという盛り上がりはないが、適度に散りばめられた茶道にまつわる興味深い場面やジョーク、20から30過ぎまでを演じる黒木華と樹木希林の名演によって飽きずに観ることができる。
まあ単純に、儀式の掟が色々説明されるのだが、それを聞いてるだけでも面白い。

この映画を見ると、茶道がどれだけ具体的な理由もなくしきたりに縛られた儀式であるかを知り、結構驚くが、そういう宗教に近いような拠り所のようなものの存在も必要なのかもしれないと思わざるを得なかった。

対照的に、脇役としてフェードアウトしていく多部未華子の、よくある女子感も笑えるようで切ない。途中までは何も考えていない女の子という印象だったのだが、ある瞬間からふと、何も考えていない女子を演じようと必死に生きているのだとわかり、彼女は彼女なりに現世のしきたりに意味もなく縛られているということが見えてくる。

死期を悟った樹木希林の「日常を繰り返せているだけで幸せ」というセリフの重みは凄まじい。晩年の彼女は仕事を選んでいたらしいが、その中でこの作品に出ようと思った意味は大いに感じることができる。
茶菓子食いてえ。
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