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ジム&アンディのKSのレビュー・感想・評価

ジム&アンディ(2017年製作の映画)
5.0
人前で被る仮面の話。

ジム・キャリーがアンディ・カウフマンを演じた『マン・オン・ザ・ムーン』での舞台裏の映像と、現在のジム・キャリーが当時を振り返ったインタビューで構成されたドキュメンタリー。


『マスク』や『トゥルーマン・ショー』、『ケーブル・ガイ』などジム・キャリーの出演した映画作品はメディアと仮面が一貫したテーマのようにも捉えられるが、本作ではそれらが如何にして生まれたのか、そしてそれを演じていた彼がそれらに対して自覚的であった事が語られていて面白かった。

本作では、“目の前にいても人の事は分からない”。“成功のために自分を偽るが、やがて、人目を気にせずに自分の中を探究してみたいと思う”。“人が求めるモノは心配事からの解放”など興味深い発言が色々あるが、これらの発言と彼の出演作がリンクしていく様は圧巻。それは、彼が演じていたアンディ・カウフマンのように、映画という作り物と現実の境が分からなくなっていく感覚があった、

そして、その偽りは見ている視聴者である私という存在に否が応でも向かってくる構造になっている。あれだけの怪演を見せつけられた後だからこそ余計にジム・キャリーが演じるジム・キャリーほど恐ろしいモノはないとも思った。


音響的には、映画撮影の舞台裏で、ジム・キャリーが役柄に入り込み過ぎて最早悪態を付いているようにしか見えなくなってしまう場面。そこで後ろに音程が外れたようなファニーな音楽を流す事で、観ている視聴者がシリアスになり過ぎないように、最後まで観るように繋ぎ止める上手い演出だと思った。


生涯ベスト級映画約1カ月ぶり9度目(ジム・キャリー出演作も合算)
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