こたつむり

68キルのこたつむりのレビュー・感想・評価

68キル(2017年製作の映画)
4.0
★ この物語は僕が歩き出す物語である―。

はっきり言ってB級映画です。
誰にでもオススメできる作品ではないと思います。R-15ですしね。

でも。でも。でも。
コメディ、ラブロマンス、ホラー、サスペンス、バイオレンス…とありとあらゆる要素を詰め込んだ“幕の内弁当”のような展開は贅沢な限りですし、何よりも“大切なもの”を尊重する姿勢は感服の極み。

その大切なものとは、ズバリ“成長”。
裏切られても傷ついても明日が見えなくても。
たった1ミリでも指を前に突き出す姿勢。
それが根底にあるから“ぶっ飛んだ展開”も許容できるのです。

しかも、本作の目玉は“女性”のサイコパス。
いやぁ。これは新鮮でした。演じたアナリン・マコードの外見と相俟って、本気で怖くなる始末。草食動物である僕は確実に一口でしょう。その挙句に吐き出されて「まずい」とか言われそう…うぐぐぐ。

また、主人公を取り囲むその他の女性たちも。
一癖も二癖もある人物ばかり。うん。女性が強くなった…なんて言われる現代を見事に切り取った構図だと思いますよ。これも本作をB級映画だと切り捨てることが出来ない理由ですね。

だから、気付けば。
観ている側を試すような展開も仕込まれているのです。まるで鏡を見ているかのように、自身の弱さだったり、情けなさだったり…そんな萎れた姿を突き付けられていることでしょう。まあ、僕だけかもしれませんが…うぐぐぐ。

まあ、そんなわけで。
強烈なパッケージの絵が印象的な作品。
勿論、中身はそれ以上に研ぎ澄まされていますので、けっして見掛け倒しではありません。合成着色料で色鮮やかな洋菓子(毒々しい…)をお求めならばオススメです。

本作を仕上げたのはトレント・ハーガ監督。
次回作以降も期待したくなる仕上がりでしたから…是非とも名前を憶えておきたいと思います。もしかしたら、タランティーノ監督みたいに大化けするかもしれないですしね。
こたつむり

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