偽名祐司

シークレット・スーパースターの偽名祐司のレビュー・感想・評価

4.6
アミール・カーンいじりが酷い(褒め言葉)音楽系ヒューマンドラマ。
「音楽は人生を変える」を地でいく超王道。
ちょっとインド映画ファンじゃないと解りにくいネタも多いですが。

話はアプリ参照で。
インシアは歌が上手で大好きな中学生。エンジニアで勉学に厳格な父ファルークとそれに従順な母ナズマ。学校の歌のコンクールに出たかったけど当然のように父の逆鱗に触れ許可されない。
ナズマは落ち込むインシアにノートパソコンをプレゼントした。ネット上で歌うなら、と思うがやはり父に見つかったらと思うと踏み切れない彼女。
母はイスラム教徒の衣装であるブルカを着て歌えば?とアドバイスした。
こうして顔を見せない「シークレットスーパースター」のアカウントが誕生する。

インドの厳格な家庭、日本の昭和初期な感じですね。大黒柱で厳格なファルークがいて、それに馬鹿にされながらも従順なナズマがいて、父に愛される無邪気な弟、後ろからみてる祖母がいる。
インドでエンジニアってのはエリートしかなれない職業なはずで当然父が娘に学校や塾に行かせ勉強を強要するのも当然な訳で。実にテンプレというか王道の設定。
TVに出てくる有名人としてシャクティ・クマールをアミール・カーンが演じ基本いじられるわけですが、凄い体格変わったなこの人。
解りやすく「名声、金、女」大好きなオッサンキャラを演じてて面白いです。
同級生にも微妙にぱっとしないインシアが好きな少し空気の読めないチンタンがいて。
インドの釘宮かって程のツンデレっぷりをインシアが見せてくれます。
アカウントパスワード知らせる所とかもう本当ニヤニヤせざるを得ない。
魅力的なキャラがいて話も王道、って時点でもう面白いですが。

作中で歌われる歌も非常に良いです。
一曲目でありメインテーマにも使われる「私は誰?」のメロディはしばらく残りました。
中盤で歌われる「お母さんの歌」やシャクティの前で歌うバラードも素晴らしい。結構サントラ欲しいかも。

母の生き方と娘の生き方が激突する後半は結構重たく昨今のインド映画に良くみられる呪いのような風習というか家庭事情があるわけで。
本当はファルークさんの厳格さよりナズマさんの絶望の方が根深いんじゃないのと思う事も。
インターバル付きのいつものインド映画クラスの長さではあるのですが、それをしっかり利用した家族事情やドラマ、恋愛事情を見せてくれるので最後の盛り上がりが凄い。
王道ではあるのですが普通に泣けると思います、その家族愛に。弟の姉に対する優しさ。祖母が明かす出産時の秘密。母の娘に対する思い。それらを見せておいて最後に炸裂する娘から母への思い。もう本当ずるい。素晴らしい締め方だと思います。

そして恐らく映画見終わった観客ほぼ全員が涙と感動に包まれてる所で、全て台無しにして笑わせにかかるシャクティ・クマールである。
もう本当に酷い(褒め言葉)。あんた最高だよ!

話は王道。歌も良い。笑って泣けて元気がでる誰でも見れるヒューマンドラマ。文句なしにお勧めします。
偽名祐司

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