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レイニーデイ・イン・ニューヨークのTEPPEIのレビュー・感想・評価

2.4
ウディ・アレン監督作。相変わらず豪華キャストの共演が注目の一つ。そんなウディ・アレンが挑んだのは、ニューヨークを舞台にした、ヨーロッパな雰囲気のロマンスだった。

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」はウディ・アレンの性的虐待疑惑により紆余曲折あり、アメリカでの公開は延期されたままだが、全体的にはウディ・アレンの古臭さが顕著になってしまった作品となった。
ウディ・アレンは「アニー・ホール」や、近年だと「ミッドナイト・イン・パリ」の絶評ぶりが記憶にあるが、巨匠、巨匠という謳われるのはだいぶ癪に触る模様。なにせ、大のアカデミー賞嫌いのマイウェイ・ゴーイングな監督。そんな彼がもう今更かよ!って突っ込むのも疲れるニューヨークを舞台にした、喜劇?ロマンス?な入れ違い人間模様を描く作品を性懲りも無く?製作した。

ギャツビーとアシュレーのカップルは、彼女が著名な映画監督にインタビューをするためにマンハッタンに行くことになったのをきっかけに、週末をニューヨークで過ごすことを計画していたが、様々な入れ違いが発生する物語。この人間模様をしんどいとか、どうでもいいとか思ってしまうのが逆にウディ・アレンの持ち味だし、ストーリーラインが浅はかでも、しっかり画面には釘付けになれた。まずニューヨークを舞台にしたわりにロケーション的な楽しみ皆無なのに、雨降る街やスコアのマッチングや衣装はウディ・アレン節ありきで良かった。美術面において、本当に旅行してる気分になれる、不思議な感覚がある。自然的背景が良かった。

肝心のドラマに関しては非常に薄い。もうこういう、「やや入り乱れた、奇怪な人間模様」は山ほど見てきたので、観ていて楽しめるとか微笑ましいとか、変にリアリティを出そうとして逆にしんどい。
そのしんどさの要因は豪華キャストによる、大袈裟な演技もある。その代表格は残念ながらヒロインのエル・ファニングなんだが、「スーパー8」のブサかわっぷりがそのまま反映され、しかも酔ってる時の演技はかなりわざとらしかったかもしれない。このイライラっぷりはエメリッヒ版「ゴジラ」に出てきたヒロインにも引けを取らないお馬鹿ぶりで、これを愛らしい、キュートと思えるのはまあ前半パートくらい。セレナ・ゴメスやジュード・ロウのコレジャナイ感も凄まじかったが、その中でもハマり役というか、ちゃんとキャラクターを表現したと思えるティモシー・シャラメ。相変わらずタバコとお酒が似合っちゃう砂の惑星の旅人。

正直、彼の力なしではこの映画は到底面白いと思えなかったかもしれない。アンサンブルにしたって、やっぱりキャラクターとのマッチ度は気にしちゃうもので、うーん、エル・ファニングを貶しているのか評価しているのか分からない位置のヒロインにするなら…とちょっと考えてしまうのだ。ひと昔だったら、キャリー・マリガンとかの方が上手く表現できてた気もする。

全体的には息抜きとか、故郷の休息とか、文学的な雰囲気を楽しめる箇所があったのに、物語や舞台も考えると…うーん特異性が物足りない感じは否めない。巨匠が撮ったっていうより、昔の人が撮った感が勝る。

総括として、数々の実力者のキャストを揃えた「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」は群像劇の面白みよりも駆け足な出だしと、キャラクターへの愛着がイマイチ伴ってこない、ウディ・アレンの退屈な映画作品の入門編な映画となってしまった。前述したウディ・アレンの性的虐待疑惑で、ほとんどのキャストが本作に出演したことを後悔しているそうだが、何だか色々なドラマを浮かべながら鑑賞してしまったので、自分自身もう一度落ち着いた気持ちで鑑賞したいと思う。
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