ShinMakita

レイニーデイ・イン・ニューヨークのShinMakitaのレビュー・感想・評価

1.8
州北部にある私立大に通うギャツビーは、ニューヨーク育ちの優秀なお坊ちゃま。裕福で上流志向の母に芸術・文学の素養を叩きこまれたが、反発心でギャンブルに才能を浪費している。そんな彼は、目下カノジョのアシュレイにメロメロだ。アシュレイはアリゾナの銀行家令嬢で笑顔の可愛い女の子。ちょっと教養が足りないが、ジャーナリストを夢見て学生新聞の記者をしている。ある日、アシュレイが有名映画監督ポラードのインタビューをする機会を得た。場所はマンハッタン、ギャツビーの「庭」だ。早速ギャツビーは高級ホテルのスイートやレストランなどデートのお膳立てをして、アシュレイを伴って帰省する。しかし1時間で終わるはずのインタビューが予想外の展開で長引き、ギャツビーは待ちぼうけを食らう羽目に。雨が降ってきたニューヨークの街をさまようギャツビーがたどり着いた境地とは…

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」

以下、ネタバレデイ・イン・立川。


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近年のウディ・アレンの映画は、旬の可愛い女性が主人公の「ミューズ系」、自身を投影した神経質で厄介な男あるいは女を主人公にした「分身系」に分けることができます。今回は「分身系」で、演じるのはティモシー・シャラメ。

冒頭のナレーション→恋人アシュレイとのやりとり数分で感じるのは、主人公ギャツビー=シャラメの嫌味っぷり。上流に反発してる割に、マンハッタン地元トークのスノッブな感じといい、相手の話に耳を傾けてない感じといい、最悪です。ここですぐさまアシュレイ=エル・ファニングに同情して、あの笑顔とはしゃぎぶりにおっさん観客はニヤケてしまうんだけど、話が進むにつれて、この共感シーソーが逆転するんですね。アシュレイ、ただの頭の弱い流され女子かと思いきや、意外と腹黒で、男の理想を打ち砕いてくれました。


小学校から私立に通っていた身からすると、ちょっと身につまされてしまうような部分もあり、ましてアレン並のコンプレックスと自己愛が肥大している俺からすると、シャラメに完全に入れ込んでしまいました。シャラメが今後アレンと組むことは多分ないだろうし、そもそもアレンが映画を撮ることすら不可能かもしれないので、貴重な一本。


最後に余談。シャラメがバーで娼婦と知り合うキッカケになった映画「過去を逃れて」は、映画史上に残る最悪のファムファタールが登場するロバート・ミッチャムの傑作なんで、要チェック。シャラメを振ってスターにホイホイついていったアシュレイのことを考えながらこの映画タイトルを口にするギャツビー、さすが芸術リテラシー高いわ!
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