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龍の歯医者 特別版のMondeFilmのレビュー・感想・評価

龍の歯医者 特別版(2017年製作の映画)
2.3
 あんまり話題にならなかった日本アニメ映画への偏愛。『きみと、波にのれたら』がやばかったので...変な汗出るぜ、gender I say well made.やはり期待を裏切らない。オザケンの謎アレンジ笑っちゃう。戦争ものと龍が題材でなんでオザケンなんだ。『ウォールデン 森の生活』とか?これのためだけに一回は見ても良さそう。オモロ。神前暁みたいなリバース。引用の意味はわからなくもないけど効果は薄い。他にこの曲以外無いという逼迫感もない、客引き?『シン・エヴァンゲリオン』のユーミンはめちゃ良かったのに。やっぱり庵野秀明パワーなのか?スタジオカラー的な、偏執的な拘りのデザインは健在。内容も「僕がここにいる意味」みたいなエヴァをめっちゃ希釈したもの。みんな生きる意味なんか無いっすけどね。全員無いから生きてていい。何十年も生きて、いろんな作品を見てこのテーマにいまだに取り組めるのはかえって凄い。死にたくないはずっすよみたいな別の価値観を理解しない態度。運命を受け入れろって言う弱者の哲学。大きな何かってことにすると心が楽になりま〜す。やっぱり映像がいいだけじゃ自分は映画に感動しないらしい。むしろ映像美が空転する印象がある。渾然一体のコンテンツ。
 現代と龍、ある意味オーソドックスなモチーフ。『龍の棲む日本』。オザケンアレンジもそうだが現代的な要素と和風ファンタジーをどう調和させるか。オタク・シミュラークル・ファンタジー。なまじオタク・想像力で死、殺人を忌避するなら戦争なんて事実を使う必要があったか?諸刃の剣というかシリアスが弱まる。結局直接的に主人公は手を下さない。誰かに頼む。異形のセカイ系。関係のない人間はみんな死んでいいという発想。殺意の判定も甘い。軍人に殺意がかけらも無い奴はおらんだろ。殺しは避けるのに風呂とかベロチューは描くんかい。結局わかったようなわからんような微妙な内容。知ってるようなコンテンツの目白押し。シミュラークルの氾濫。押井守が「映画に最後に残るのは世界観」みたいな話してたが、この作品じゃなくても得られるような経験が多い。軍人とか官僚は無能みたいなお約束。転生した主人公を憎む林原めぐみクリシェ。微妙。90分に注ぎ込む内容の量じゃない。登場人物も多い。龍の歯医者のバックボーンがありすぎて歴史書読んでる印象。設定は一応口で説明されるけど頭を上滑りする感じ。シンジくんみたいにわかんないって言ってくれる登場人物はいない。SFのわからなさを担ってくれるシンジくんは偉大。ペトロールズの「はのうた」とか2分で感動するのにな。ただモンスターとしての菌というモチーフは印象的。殺しても問題にならない敵としての菌や虫。アクションゲームの題材。アイデアとして魅力的。戦争とか口だけ達者なシリアス。実感がない。後編に顕著だが貴族の子弟とかオタク的な主人公は特権を持ちがち。中流階級的想像力の反映。貧しい子供に食事を分けるような「慈悲」。「安全に痛い」。戦争ものではオタク・主人公は死ぬしかない(実際に作中で死んでいる)。だから生き返って温い世界に転生するしかない。『フリクリ』とか作れたスタッフなんだから変にテーゼとか持ち出さなきゃいいのに。
 歯医者ってめちゃくちゃ行きたくないですよね。悪くはなっても治癒はしないらしいです。悪化した部分が見つかるばかり。生を諦める理由が増えていく。老衰はある種合理的なシステム。生きることに執着しなくなる。虫歯って基本的に悪くなっていくだけなので元通りになるなら歯医者ってターム使うなやって思います。
 そういえば幸福の科学の人主演で話題になったのよね。演技そこそこ上手いと思う。宗教映画でも主演張ってるそうですね。声優は出演すると給料がいいらしい。職務全うしろみたいなテーゼは宗教チックだ。オタクってキャッチフレーズ好きだよね。なるようにしかならんみたいな、国際信州学院大学みたいなこと言い出す。後編の冒頭、金髪外人がかな入力しててよかった。ダメなハガレン。論理が徹底していなくて、中途半端に矛盾した世界が描かれる。
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