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とんかつDJアゲ太郎のsanbonのレビュー・感想・評価

とんかつDJアゲ太郎(2020年製作の映画)
3.6
まず、ちゃんと手を洗おっか。

これは、冒頭で慌てて帰宅した「アゲ太郎」が、サッと水洗いしただけの手でキャベツの千切りを始めたシーンに対する苦言なのだが、曲がりなりにも食を扱った作品で、抜かりがあってはいけない衛生面への配慮が行き届いてない事がまずはめちゃめちゃ気になった。

ましてや、時期的にも手洗いうがいの徹底をこれでもかと叫ばれているこのご時世で、こういうやらかしをするあたりがやっぱり「フジテレビ」っぽいなという感じ。

あと、フジテレビっぽいと感じさせる要素がもう一つ。

それは、タレントの使い方だ。

「パパイヤ鈴木」や「DJ KOO」など、本編に特別必要ないゲスト俳優を、"あからさま"なアイコンとしてカメオ出演させては画面の"賑やかし"に使ってくるあたり、いかにもフジテレビ制作のバラエティっぽい映画だと思った。

ちなみに、僕自身「クラブ」には2回ほどしか行った事がないのだが、その少ない経験値だけで決めつけてしまえば、あの空間は個人的には超苦手である。

とにかくうるさいし、人がすし詰め状態だし、酒で汚れてベタベタするし、本当に無心で音楽に酔いしれる事が出来ない限りは、あとは暗がりで女の子を引っ掛けるしかマジでやる事がないのだ。

それと、もう10年くらい前になるので時効だと思って打ち明けるが、クラブの雰囲気にも全然慣れず、正々堂々と見ず知らずの異性にアタックなど出来なかった当時の僕は、女子トイレの入り口付近で微かに縦ノリをかましつつ、凛々しい顔つきで腕組みしながら、そこを横切る女の子のおっぱいをひたすら肘でツンツンしていたのは、完全に酔っ払っていたせいである。

今にして思えば、おでんをツンツンしても捕まる時代で、あれはれっきとした痴漢やセクハラの類いだし、暗くて密着した空間にいる人の大半がお酒でテンあげ状態の場において、おかしな気が起きてしまったのは紛れもない事実ではあるが、それでもまあ、顔つきを凛々しくしていたおかげか、肘だけでとどまったのはまだ不幸中の幸いだったのかもしれない。

いや、酔っ払ってたとか、肘だけとかそんな言い訳はしない。

あれは出るとこ出ればちゃんと犯罪でした。

また、クラブだからとかみんな解放的だったからとか、そんな場所やシチュエーションは勿論関係ありません。

私の思慮の浅さや、その場だけ楽しければそれで良いといったような軽率で身勝手な行動が招いた、自業自得としか言いようのない結果であると今は重く受け止めております。

この度は、作品に携わっているスタッフ、出演者の方々に、多大なご迷惑ををお掛けした事を深くお詫びし、このような事を二度と起こさないよう猛省し、今後の戒めとして生きていく所存であります。

ただただ…申し訳ございませんでした。

深々お辞儀 フラッシュパシャパシャーッ

最後に、今は中々行けないと思いますが、クラブにはこのような「妖怪肘ツンおじさん」が現れる事も稀にありますので、遊びに行く際は女性の方は特に十分気を付けて下さい。

パシャパシャーッ

…ふぅっ…さて、出演者が問題起こしまくりの今作の呪いなのか、過去自分が犯した罪を謎に一つカミングアウトしてしまったが、懺悔と注意喚起も済んだ事だし、気を取り直して作品の感想に戻るとしよう。

今作は、間違いなくラストのDJプレイの為に全てがあると言っても過言では無い。

「伊藤健太郎」が「まんまとアゲ(検挙)られちゃったよ」と意味深な発言をするキャラクターも、結局は最後のあのカタルシスを演出する為だけの存在だったし、トンカツ屋の跡取りという設定も、トンカツを揚げる工程で鳴る音をサンプリングしたオリジナル曲への布石という役割が大きかった気がする。

また、物語の中盤まで繰り広げられる仲間たちとのダサい掛け合いは、本当に面白くないうえに羞恥心も半端ないのだが、それらも全て最後のその展開にしっかりと活かせていたのだから、まあ結果オーライという事で良しとしよう。

ただ、これはあくまで個人の意見なのだが、今作で用意されたプレイリストがなんか総じて古くさいというか、ファミリー向けに誰でも知ってる曲を集め過ぎていて、ノリがクラブというよりもディスコみたいになっていたのはどうなのだろうか。

クラブ初心者の分際では、今作が使用した楽曲のセンスの良し悪しを量り知ることは出来ないが、今の主流はEDMが基本なのでは?

その上で、示し合わせたダンスをみんなで踊るような描写があったりするから、ますますクラブって感じがしなかったのはちょっと残念なところ。

トンカツとDJに類似性を持たせるというギャグに全振りした設定でありながら、今作は主人公のサクセスストーリーという側面も併せ持つ作品なのだから、DJパートはもっとリアルにカッコよく演出してくれた方がより楽しめた気がする。
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