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SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬のneroのレビュー・感想・評価

2.0
鋤田正義1938年生まれ。
1970年代、彼の大胆かつ端正な写真がアドシーンを席巻していたっけ。もちろん自分も憧れた。あんな写真を撮れるようになるには、目が全く足りないのだと気付くのにもずいぶんかかった。
映画の撮影時は78才。あの頃はカッコよかったが、なんかすっかり朴訥で無邪気な爺さんって感じになっちゃって、それもまたいい年のとり方をしているようで羨ましい。

映画は、被写体となった人々、仕事仲間、血縁者、それぞれとの対話あるいはコメントをシャッフルし、世界の展示会場を巡る鋤田の姿と撮影情景を挟み込むという構成。映画としてはひどく散漫で、ドキュメンタリーとしての明確な視点があるかといえば、いまいち感じられない。
彼自身の人間性は伝わったし、KANSAIやジャームッシュの部分は興味深かったが、当時のアドシーンの先端にいた人々が語る思い出話が多く、アノ時代を知る者以外は興味を惹かれないだろう。ADCのステータス具合とかね。個人的には寺山修司との関わりを本人にもっと突っ込んで欲しかった。
もうちょっと一次情報の掘り起こしがあればねえ。(もちろん写真家にとって一次は写真そのものに他ならない) あるいは画面を分割してSUKITAの写真を見せ続けるとかね。ぎりぎり日本スゴイにはなってないのでまあいいか。

撮影された2016年にはジム・ジャームッシュとイギー・ポップは仕事してたはずだから、同時に出てもらうことはできなかったのかねえ。そして望んでも詮無いが、やはりここにボウイ自身の生の声がないのは画竜点睛を欠くってやつだよねえ。
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